紅き狼

□余裕
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しばらく他愛もない会話をしながら歩いていると、一軒の大きな建物が視界に入ってきた。
 
「あ、あれがオレんち」
 
悠奈は自然溢れる中に建つ建物を指差して告げる。
建物の裏には、大規模な森林が広がっていた。
 
「……デカいな、君の家」
 
今まで住んでいた自宅が二軒、縦にも横にもすっぽりと入ってしまいそうな大きさと広さに、驚き半分、呆れ半分な呟きが思わず溢れた。
それを知ってか知らずか、悠奈はまぁねと事も無げに答えた。
 
「ここらじゃ一番じゃないかな?住んでんのは今んとこオレ含めて三人だけなのになー」
 
景色だけはやたら良いぞと、悠奈は言いながら歩み続ける。
 
「たった三人であの家…なぁ、君の他にどんな人があそこに住んでるんだ?」
 
ちょっとではなく、かなり気になる事を悠奈に尋ねた。
それに返ってきた答えに、何と答えれば良いのか分からず、一瞬頭が真っ白になった。
それは、「お母さんみたいな男と、怪しい趣味の男」と、悠奈がサラリと言ったからだった。
 
 
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