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□庭球
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夜の猫

開いた窓からなおんなおんと猫が鳴いているのが聞こえる。
夏のもう7月も終わろうとしている今が発情期だったっけと先日みた子猫を思い出しながら考えるけどわからない。
多分まだ梅雨が終わらなくて温度も例年より低いから勘違いしてるんだということにして、隣の男に目をやる。
狭い部屋、とはいえ俺が上がり込んでいるんだけど、雑魚寝をしている為手を延ばせば届く距離。
すぅすぅと安定した寝息を立て、壁側を向いて寝てる。
這いずって横につき、きちんと胸以下に掛けてあったタオルケットに手をのっける。
「ねぇ忍足、」
耳元で名前を呼んだらむずがりながら目を開けて、なんや?眠れへんのか?と言う彼はまるで保護者みたい。
「ねこがずっと鳴いてるんだよ」
「ー、ん、あぁせやなぁ。ようないてんょ、あのこ」
「発情期なのかな?」
「よんだらなぁ、にゃぁ、てふりむくんやでぇ」
「ずっとなおなおいうんだよ」
「ぁあ、はいいろでなぁ、かわえぇなあ。しっぽ、かぎしっぽやねん」
「…聞いてないでしょ忍足」
「んー?」
続かない会話に拗ねた顔をするけど忍足は半分以上夢の中。
体の上に置いてた手で横を向いてた体を天井に向けさせる。
「忍足、俺さ…」
猫の声にあてられて発情したみたいなんだけどと言おうとしたらぽんぽんと忍足の手が俺の胸の上をリズミカルに叩いて
「じろちゃんもねよな」
とゆっくりした声で言われたら寝るしかない。
外ではまだ猫が鳴いてるけど、忍足の落ち着いたリズムを聞いてると気にならなくなってった。




***
猫が切なそうに鳴くのです!

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