0

□ポケ
1ページ/1ページ

※設定
初代時(10歳)から10年後。
主人公は他地方へ放浪、ライバルはジムリーダー兼研究者。他ジムリーダーはそのまま。榊はトキワの森の深くでひっそり生活(関係ない)。







しずく



「俺がチャンピオンだったらあいつはずっと近くにいると思ったんんです。だから、だから急いでチャンピオンになった」
俯いて表情は伺い知れないがそれは想像しているものと違いないと思う。

10年前、いつ思い出しても彼との時間は一瞬だった。1つ前のジムリーダーであるタケシから『少年が二人きた』『将来どちらかがチャンピオンになる』と意気揚々とした口調で電話を掛けてきて、それを軽く流した数日後にその片方、また数日おいてもう一人がきた。バトルして、いやそのもっと前の、ジム内に入った瞬間にわかった。ああ、この子供がそうなんだとわかった。ただそのとき片方、赤い帽子の少年に小さな違和感を感じたことは最近まで忘れていたんだけど。
私のジムに来て暫くして、かなりのスピードでカントーを突破した二人のチャンピオン戦はくらくらする程眩しくて、たまらなかった。彼が勝ってみせた笑顔が、ポケモン達を労る手が優しくてたまらなかった。涙が出た。
優しくて、優しくて、優しくて。
それが10歳いくばくも無い少年の見せる顔でないと解ったのは彼がいなくなって数年が経った秋のことで、あの時の涙はその後の別れを直感として感じた為だったのではないかとさえ思えてかなしくなったことを覚えている。

コトリ、とカウンターにグラスを置いた横の男に目をやれば、顔を上げてバーテンに次のカクテルを頼もうと手を挙げるところだ。
「何頼むの?」
「モスコミュールです」
「ジンジャエールのだっけ?よくわかんない味するじゃないそれ」
「飲んだのチェーン店でしたか?ココはジンジャービアが手作りでうまいですよ。あ、モスコお願いします」
はい、モスコミュールですねと低い落ち着いた声で返事して、恰幅の良い、髪を後方に撫で付けたバーテンは慣れた手つきでグラスやらを用意する。
その様子をぼんやりみてたらまた話し出す。
「チャンピオンになって、四天王を撃破していくトコ見て、興奮しました。会う度に強くなるあいつに俺はぜってぇ負けねぇって信じてた。もし負けてもあいつはずっと近くにいるって信じてた。−カスミさんは、どう思いますか?まだ、あいつ、」
「生きてるわよ。信じなさい。あんたが信じなくてどーすんの」
息の詰まるグリーンに間髪与えず言う。泣きそうな顔でせっかくの男前が丸つぶれ。グリーンを好きな女の子が見ればかっこいいと思うかもしれないけど私はかっこわるくて、ぶっさいくな顔だと思う。
「ふふ、すごい顔してる」
「…何すかそれ」
「泣きたいなら泣けばいいじゃない。我慢する必要なんかないわよ今更だし」
そう、今更。彼がいなくなった時に心配と恐怖が全面に押しでた顔で私に何度も泣きついてきたくせに、身内に縋れない弱いとこを見られたくないからってわざわざ来たくせに、何大人ぶってんだこいつ。
「二十歳なったからってもまだ二十歳じゃない」
睨んで言えばきょとんとした顔になって、あ、泣く。眉間にぐっと皺がよった。
「はは、は、やっぱカスミさんすごいな」
ぽたりと零れた涙がぽたぽたと続く。
笑いながら泣くから呼吸がおかしくて咳込んで、また笑い泣く。
「あんた大丈夫じゃないね」
「そんな、決め付けなくても」
目尻の涙を拭ったところでタイミングよくモスコミュールが出される。横から貰う前、ライムの飾られたそれに塩味が加わらないことを願った。


雫がどこかにいる彼の心に染みて、傷付いた彼を癒してくれればいいのに。
そう私は思う。愛しい彼にまた逢いたい。


おわり。
*******
10年前からチャンピオンは変わらない。誰もがジムは突破できても四天王に破れるので。
みんな帰りを信じている。

こんなん書いときながらも赤氏とは不定期連絡(すごく一方的)をとっています。不定期すぎて赤氏好きな二人は生きてるか不安になります。
そろそろカントーに戻る(10年鰤位)気ですが、帰ったら赤氏に乙女と乙男がべったりになること必須です。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ