0

□いちまん
1ページ/2ページ

抱き留められてキスされたからといって、男が男にされたとこで頬を赤らめる訳ねぇ、寧ろ青ざめるだろう。
それは彼の18年と数ヶ月の経験に裏付けられた考えである。


きっと人の理解はできないし自分で自分を理解する日はずっと来ない


その日の夏目は、いや普段から夏目はおかしいのだが、増しておかしかったと神崎は思い返す。
やたら笑い、饒舌だったと考えるがそれは不快窮まりない刺激により中断を余儀なくされる。
「気持ち悪ぃっ!」
「仕方ないじゃん、繋がるにはここしかないでしょうも。」
神崎の体の下方、股の間に顔を埋めた夏目は返す。舌をあらぬ場所に伸ばし感じたことのない感触、普通であれば感じずに一生を過ごすであろうものを神崎は与えられた。それに彼は唯一抵抗を示せる足で男を蹴上げようとするが、捕まれ内股にぬめりと舌を這わされる。
「っ、…なにいってんだテメェ」
流れからこの先起こることは最初から最悪なものとして予想できている。しかしそれを許容するかは全く別の問題であり神崎は夏目を理解できないし、理解する気なぞ毛頭ない。
夏目は青ざめた顔を見上げ、
「気持ちが欲しいよ、でもそれ以上に神崎くんの体が欲しくなる、俺は全てが見たい」
と、うっとりとした表情で神崎に言う。
夏目は自分のすること一つ一つに反応を返す神崎をいつからか気に入っており、滅多に自分以外のものに興味を持たない彼の想いが固執、執着へと変わるのに時間は要らなかった。その様は周囲の親しい人間、城山なんかが見れば一目瞭然でとても早いものであった。
神崎は夏目が自分に対しそのような感情、執着を持っていると薄々感づいていたがこれ程とは思っていなかったし、わかっていても受け入れる気などなく、現に悍ましいものを見るように夏目に目をやる。
「ふ、体が欲しいのかよ」
「うん」
「最低だなテメェは。全部見たいって何様?言ったら俺が従うとでも思ったのかよ」
組み敷かれ、上肢は拘束され、服も剥かれて胸や腹に赤色が点在しているというのに高慢な、主導権は自分にあるといった口調で言う神崎に夏目は脊椎から四肢にかけてゾワリと興奮が神経を駆けるのがわかった。なんて俺を煽るのだろうかと考えるが、神崎が気づくことはない。そう考えるとより一層夏目の腹の奥は熱くなった。
「おい、聞いてんのか」
いきなり動かなくなった夏目を離されていた足で押し返す。肩を押されバランスを後方に落とした夏目は手を付き転倒を防ぐ。
怪訝に自分を睨む目線に自分の狂気をわかりつつも抑えられない夏目はまだ若く、無意識にも彼の興奮を煽った男も若い。夏目はこんな性癖でありながら虚しくも社会性と一般常識は知識として持ち合わせた男であり、若いが故の過ちとして済むところはここまでであるとわかるし、自分の求めてやまない神崎にこれ以上手を出した先にある悲惨窮まりない状況も想像にたやすい。であるのに抑えられない欲望と若さ故の無謀な考えは留まる所を知らなかったし、自力で抑えられるほど成熟した人間性を持ち合わせていないがその自覚は夏目になかった。
神崎は反応を返さない夏目にこのやろう、ともう一度上げた足をガッと捕まれ膝を肩につくまで引き付けられる。
「ィ゛ってぇえ!!」
「えー体柔らかいから大丈夫でしょ。いい眺めだし〜」
「知るか!男まんぐり返して何が楽しい!」
「それはもう!愛があるからね!!」
「んなこと聞いてんじゃねぇ…っ?!」
いきなり臀部に伝う、冷たくぬめった感触に神崎はビクリと体を震わせる。
「なにして…? っ!」
「冷たいけどちょっと我慢してね」
垂らした液体を満遍なく塗り付けるよう動かされる夏目の手が視界に入り、急いで目を反らす。
「この変態っ!離せ!」
「うわぁもう神崎くん食べちゃいたくなるくらいかわいい」
言うが早いか、夏目は玉に食いつきじゅるりと全体を吸い、あまりの驚きと不本意な感覚に神崎は息を飲んだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ