オリジナル
□嫁がされ主人公と王様1
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「そんな落ち込むなよ、俺とは嫌か?」
ルフトは優那の肩を抱き寄せ頭をくしゃりと撫でた。
事の発端は1ヶ月日前。
東国の殿様、醒龍様に呼ばれ、執務室の下座に正座をして待っているとふすまが開き醒様が座るまで頭を下げゆっくりと頭をあげ醒様と目線を合した。
久し振りに間近で醒様を見て、幼い頃の面影は無く、眉をはきりりと凛々しく目鼻立ちは整い精悍な顔立ちは思わず見惚れてしまう程成長していた。
「優那、息災か?しばらく見ないうちに成長したな」
かわいい方にとは口に出さずに。
「ありがとうございます」
優那は醒に誉められ嬉しそうににっこりと笑った。
犬のしっぽが見えるのは見なかったことにしよう。
「そうだ、優那お前に頼みがある。行ってくれるか?」
「はい、何処までですか?」
優那は元気よく答えた。
「獣人族の王にこの文を渡してくれ、この文は内密な文の為外部に漏れないよう頼むぞ」
醒様はにやりと意味深な笑みを浮かべ側近に目配せをすると側近は胸元から文を出し優那に渡した。
「承知いたしました」
緊張した面持ちのまま文を受け取り、
「優那、蒼厳(そうげん)は元気か?」
「はい、父はあいかわらず元気です。家督を兄に譲ってから特に」
家に居る父を思い出しげんなりしながら応えた。
「あいかわらずなんだな」
と醒は笑う。
「そうなんですよ、では、いってまいります」
と頭を下げ部屋を退室し、家に帰り4日分の食料とお弁当を作り身軽な服装に着替え獣人族の国へ歩き出した。
朝方に歩き出して森に入りだいぶたった頃、西側にあった太陽は今は太陽が真上に昇っておりお昼を告げている。
優那は座れる場所はないかと見渡していると人が倒れいるのを見つけ駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか?」
近くで見ると人ではなく人よりふた周りも大きな小麦色の毛並みの獣人が薄汚れ倒れており、優那はおろおろしているとその獣人は鼻をヒクヒクと動かした後、がばっと起き出し優那の体をがしっと掴み首筋の匂いを嗅ぎ始め。
「んっ、ひ〜!!」
食べられてしまうかもしれないという恐怖感が頭をしめ、覚悟を決めた時。
ぐぅ〜と豪快なお腹の音が聞こえ、
「腹減った」
と力の無い言葉に優那は噴き出した。
「あはははっ」
「・・・・」
優那はお腹を抱え笑い続けているが獣人は目を見開いたまま立ち止まり優那を見つめている。
優那は気が済むまで笑い目に涙を溜め口をひくつかせながらかばんの中から包みを取り出し容器の蓋を開いて渡した。
「良かったらどうぞ」
「いいのか!!」
獣人は嬉しそうに目を輝かせ耳を動かした。
「はい」
優那はにっこりと笑うと獣人はがつがつと勢いよく食べ出した。
優那はかばんから水筒を取り出しコップにお茶を注ぐと獣人に渡した。
「お茶です、熱いから気を付けて」
「////ありがとう」
獣人はおずおずと受け取りふーっ、ふーっ、と息を吹きながらちびちびと飲んだ。
「旨かった」
「お口にあって良かった」
「そう言えば俺名前言ってなかった、俺ルフト」
「私は優那」
「優那、お弁当ありがとう。食いもんが無くて倒れてたから助かった」
「お弁当食べる前に見つかって良かったですね」
にこりと優那が笑うとルフトははにかみながら頷いた。
「そだ、優那はどこかに行く予定だったのか?」
「へ?はい、獣人の国へ」
ごにょごよと言葉を濁し、笑ってごまかした。
「なら俺の背中に乗せてやるよ。歩くよりかは早く着くぜ」
「いいんですか?」
「おう、弁当のお礼だ」
ルフトは優那が乗りやすいようにしゃがみ
「しっかり掴まっとけよ」
「はい」
優那はルフトの首に抱きつくとびゅんびゅんと風を切り森を走り抜け森の薄暗さから太陽がさんさんと照りつける大地へと移り反射的に目を閉じた、ゆっくりと目を開けるとそこは広大な緑の草原が見え、どこまでも続いてる。
夕陽が東の空へ沈む頃には獣人族の国との境界の村に着いた。
村は交易場所として栄え色々な人種の人達で賑わっている。
「ルフトさんありがとうございます、これで明日には獣人族の国に着けます。 あの、お礼をさせてください、この後ご予定とかありますか?」
「命を救ってくれたお礼だ、安いもんだぜ。これといって予定は無いな」
「そうですか、じゃあ」
話を続けようとした瞬間、視界を塞がれ拘束された。
「優那〜!!」
ルフトが叫んだが黒服の集団は優那を拐い人混みに紛れた。
「ん〜、ん〜」
優那はもごもごと体を動かし抵抗してみたが太い腕に抱えられている為びくともしなかった。
抵抗するのも無駄だと思い身を任せしばらく担がれた後そっと下に降ろされ拘束をとかれた。
「ぷはっ、ここはっ!?」
周りを見渡すと鋭い視線のお兄さんと目があった。
こ、この人こわい
優那はぶるぶる震え怯えているとお兄さんは椅子から立ち上がり優那の前に膝を付き優那の顔を上に向かし
「・・・・」
「・・・・ほう、なかなか」
お兄さんは優那を品定めするかのようにまじまじと見つめた後、満足げにつぶやいた。
あぁ、使命もまっとう出来ずに売られてしまうのかもしれない
という恐怖が優那の心を占め始め震えていると、
バンッ!!と勢いよくドアが開きどかどかとルフトが入って来た。
「優那、大丈夫か!!」
「ルフトさん」
ルフトは優那に近寄ると優那はルフトに抱きついた。
ルフトは優那を抱きしめた後、
「空気とは良く言ったものだな」
とお兄さんはイスに座り不敵な笑みを浮かべ見下ろした。