バサラ

□うわさ
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伊達家に女中として仕える前から片倉様の噂は耳に入ってきてました。

鬼の化身だの、
阿修羅の成り代わりだから関わらない方がいいだの。

噂なんて大げさに言ってるだけかもしれない。


伊達家に仕え仕事にもなれてきた頃、

私はかぼちゃを切っている時少し切ってしまって、

「いたっ!!」

少し血が出たけどすぐに止まったからまぁ、いっかと思い作業に戻ろうとしていると声をかけられました。

「おい」

ドスの効いた声に身体が強ばりました。

「ひぃ」

私は油の無い金具のように後ろにいる片倉様に身体を向けました。

「手を見せろ」

片倉様は言いましたが、
わたしはたじろいでいると片倉様はチッと舌打ちし、ケガした方の手を掴みました。

「切れてんじゃねぇか」

「え、・・・・はい、傷は浅かったので」

「ばかやろう、切り傷なめんな破傷風にでもなったらどうすんだ」

片倉様は懐から小さな竹筒を取り出し私の指に塗って下さいました。

「よし、あ、ちょっと待て」

手ぬぐいを懐から出して裂き私の指に巻いて下さいました。

「これでいいだろ、しばらくは水仕事すんじゃねぇぞ、分かったな」

片倉様の声音は優しく、はにかんだ姿に胸がドクンと高鳴り顔が熱くなりました。

「あ、ありがとうござい、ます」

私は消え入りそうな声で言いました。

「・・・・かぼちゃどうすんだ?」

「煮付けを作ろうと思いまして」

片倉様を見上げると耳がほんのり赤く染まってました。

「煮付けは俺が作るからそこに座っとけ」

「はい」

私は嬉しくなった。

何だ、噂なんて嘘っぱち

実はぶっきらぼうなだけ

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