jam
□Good bye,Mermaid.
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『全隊員に告ぐ!!』
サイレンが鳴る。
『緊急出動だ、』
真っ黒の隊服がはためく。
『高杉の居場所が判明した!!』
ドクン、と。
心臓がゆっくりと収縮した。
ザアザアと雨が降りつける。貴方と出会ったのも、確かこんな日だった。
嗚呼。
何と言う皮肉。
真選組の隊士として生きるあたしが、敵である貴方に救われたことがあるなんてね。
「…オイ」
思考に沈んでいた意識が、隊長によって引き戻される。
「しっかりしろィ」
「す、いません」
額を弾く細い指。
逆側の手には、雨粒に濡れる白刃が握られている。
人を斬るのは、初めてじゃないのに。…何でかな。腕が震えるんだ。
「出るぜィ」
――刹那。
出陣の合図で、斬り込み部隊である一番隊が駆けて行く。
一拍遅れて走り出したあたしも屈強な男達の間を縫って、先頭を走る隊長に並ぶ。
そう、これは武者震いよ。
――一目でいいから、また会いたかったなんて。
目標の舳に舞う蝶を睨み、あたしは大きく地を蹴った。
一目だけでも構わない
(愛しいと、心臓が甘く哭いた)
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