jam
□crazy for U
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――たっぷり10分間は固まっていたと思う。
いや、もしかしたらそんなにかかってなかったかもしれないけど。
つまり呆然と目を見開いたあたしが、それを認識するまでに時間を要したということで。
「オーイ」
ぺち、と頬を叩かれて我に返る。
戻ってきた思考に脳みそを必死に回転させ、何とか現状を飲み込んだ。
「何ボケッとしてんでィ」
「あ、いやあの、…ごめんなさい」
って何謝ってんだろ。
すると目の前の"彼"はぐりぐりとした大きな瞳でこちらを見つめ、暫くしてからハッと鼻で笑った。
…ムカつく。
「あ、あんた誰なの?てゆうか犬は?」
とりあえず、コイツがどうして総悟そっくりの顔をしているかは置いておこう。
あたしの17年間の人生を総動員したとしても、こんな生き物にお目にかかったことはない。
(漫画とかで見たことはあるけど)
人の姿をしているのに、本来顔の真横にあるはずの耳は何故か頭頂部付近にある。
加えて臀部から映えた蜜色の尻尾。
「コレ本物?」
あまりにも不審だったので、端っこで揺れる尻尾を掴んでみた。
するとソイツは奇妙な声を上げ、間髪入れずにあたしの頭を殴る。
「痛ッ!」
「こっちの台詞でィ。いきなり人様の尻尾握るたァ、躾のなってない女だねィ」
…しつけ、て。
というか"人"様なのかどうかは微妙なところだ。
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