jam

□crazy for U
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「…やっぱ本物」

「当たり前だろィ。ニセモノがこんな自然に動くか」




そう言ってピコピコと耳を上下させた。

…可愛い…じゃなくて。



「じゃ、アンタは"何"なのよ?」



耳の真偽が定かになったところで、本題を問いかける。
誰、よりもまずは何、と聞くほうが無難だろう。

じっと訝るように凝視していると、ほとんど無かったその表情が僅かに動いた。



「俺、かィ?」



ニヤリと口端を上げて問い返され、あたしは些かムカッとする。



「アンタ以外に誰がいんのよ、!!」



それ故、つい大声を出そうとしてしまったのだけれども。



「―――…あのね」

「何ですかィ?」


「近い、んですけど」



まさしく目にも止まらぬ速さ。

1メートルほど距離があったのに、そいつは簡単に間合いを詰め、床に手を突いた状態で無駄に整った顔を近付けてきた。



「…ケ、ケーサツ呼ぶよ」

「呼んでもいいですがねィ。アンタが捕まりやすぜ」

「…は?」



――刹那。

ドロン、とかベタな効果音と共に、視界が一瞬煙に遮られた。


思わず閉じてしまった目を、恐る恐る開く、と。



「…………!!!!!」

「ここァ、ペット禁止なんだろィ?」



そこにいたのは、私が先刻助けたはずの…"犬"。



「因みに言っときやすが、俺は犬じゃありやせん。
エドギツネっつー種類のお狐様でさァ」



向けられた笑みは、先ほどと寸分たりとも違わない。
(ニヤリ、とかそんな)
(何でどーぶつがこんなに表情豊かなの)



「ソウゴ」

「…え」












「…俺の、名前でさァ」











そうして小さく口をすぼめ、ふっと軽く息を吐く。
呼気と同時に炎が舞い上がり、あたしの前髪がチリ、と音を立てた。










(あの日喪くした色は、)
(そう、確か蜂蜜のような)





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