jam
□crazy for U
3ページ/3ページ
「…やっぱ本物」
「当たり前だろィ。ニセモノがこんな自然に動くか」
そう言ってピコピコと耳を上下させた。
…可愛い…じゃなくて。
「じゃ、アンタは"何"なのよ?」
耳の真偽が定かになったところで、本題を問いかける。
誰、よりもまずは何、と聞くほうが無難だろう。
じっと訝るように凝視していると、ほとんど無かったその表情が僅かに動いた。
「俺、かィ?」
ニヤリと口端を上げて問い返され、あたしは些かムカッとする。
「アンタ以外に誰がいんのよ、!!」
それ故、つい大声を出そうとしてしまったのだけれども。
「―――…あのね」
「何ですかィ?」
「近い、んですけど」
まさしく目にも止まらぬ速さ。
1メートルほど距離があったのに、そいつは簡単に間合いを詰め、床に手を突いた状態で無駄に整った顔を近付けてきた。
「…ケ、ケーサツ呼ぶよ」
「呼んでもいいですがねィ。アンタが捕まりやすぜ」
「…は?」
――刹那。
ドロン、とかベタな効果音と共に、視界が一瞬煙に遮られた。
思わず閉じてしまった目を、恐る恐る開く、と。
「…………!!!!!」
「ここァ、ペット禁止なんだろィ?」
そこにいたのは、私が先刻助けたはずの…"犬"。
「因みに言っときやすが、俺は犬じゃありやせん。
エドギツネっつー種類のお狐様でさァ」
向けられた笑みは、先ほどと寸分たりとも違わない。
(ニヤリ、とかそんな)
(何でどーぶつがこんなに表情豊かなの)
「ソウゴ」
「…え」
「…俺の、名前でさァ」
そうして小さく口をすぼめ、ふっと軽く息を吐く。
呼気と同時に炎が舞い上がり、あたしの前髪がチリ、と音を立てた。
(あの日喪くした色は、)
(そう、確か蜂蜜のような)
続