jam

□少女金魚
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でもさでもさ。
そんなたまーにわたしが見せる優しさ?っつーか仲間意識?みたいのがさ。
まさかこんなことになるとは思わないじゃん。


そうだよわたしにはやる気なんてございませんよ。

学校めんどいし。
勉強めんどいし。
センセーうるさいし。
ああもう全部全部、いっそのこと皆金魚になりやがれチクショー、とか思ってたりもしましたけどね。





いつかどっかの誰かが言った。
「欝状態の人間が、自殺に走ろうとする条件は一つだけ」

それは、たまーにやる気を見せた時なのだ、と。





皮肉なもんだ。
金魚を可愛がってただけなんだよ。


だけど気付いたら、あたしが大空という名の大海にダイブしてたんだよ。


ほとんど無意識。
体が勝手に動いたんだ。

最後に聞いたのは、カシャン、て小さくフェンスが軋む音。
ああそれと、耳元で渦巻いたごうごうという風の唸り声、かな。



その後?
そんなもん知らんよ。

だって全部、なくなっちゃったんだもん。
世界の代わりに、わたしが金魚になっちゃったんだよ…ってコレあんまり上手くないな。





まぁ兎に角さ、わたしに非はないと思うわけ。
自殺願望があったわけでもなけりゃ、いじめに遭ってたわけでもないし。
欝だったわけでもないんです。


ただ何か、全てが面倒だなって、



































だからさ、まさか自分がこんなことになるとは思わないじゃん。





「おーい、おねーさーん」





死後の世界なんて、そんなもんは信じてない。
それこそちょっとイっちゃってるのかと思うし、ていうか漫画の読み過ぎだ、アンタ宿題はもう終わったの!?ってな感じだし。





「ちょっ、悲しいから無視はやめてね。
聞こえてたら返事をしなさい、聞こえてなくても返事しろコノヤロー」







え?いやジャンプは別物だよ。
あれはもう教科書だもの。人生のマニュアルだもの。





「いや誰がジャンプの話をしましたか!
ってかコレは俺のだから!俺が汗水流して貯めたゴールデンペーパー(野口サン)で購入した尊きジャンプだから!」






誰もそんなん聞いてねーよバカヤロー。
いいからジャンプよこせよ、今週のベルトがどうなったか気になって明日を生きられねーよ。





「いや安心しろよ。アンタもうそんな心配しなくてよくなったから」





…は?
ちょっとおにーさん、アンタ今何て言いましたか?
涼しい顔して人の生命活動を真っ向否定かコノヤロー。

そんなふわっふわした頭しやがって。
割り箸刺して夜店に並べてやろーかァァァ!!!





「オイコラてめーという子はこれを何だと思ってんだ。
そんなコテでかっぺかぺに伸ばしたような頭髪の野郎には、天然パーマの気持ちなんか分かんねーよ」






いや誰が天パの話したよ。

っていうかここどこ。
わたしこれからやんなきゃいけないことが。





「だーかーらァ、オメーは人の話を聞けって通知表に書かれませんでしたか!
これからやんなきゃいけないことなんてねーんだよ!お前はもう死んでいる!分かった!?」







…え?
それって北斗の、















青い空に溶ける瞬間、

頭を過ぎったのはこれからの飼育係のことでした。




(取り敢えず、金魚を殺して欲しくないなぁ)














***
蛇足的補足。

主人公は決して鬱状態な訳ではありません。
また、文中にある鬱症状は管理人が心理カウンセラーの先生からお聞きした話を元にしております。
よって実際の患者さんが全てこの状態に該当する訳ではありませんので誤解なさらないよう注意して下さいませ。

よろしければこちらのサイト様も見て下されば幸いです。
うつ病について




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