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□かみさまのお気に入り
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神とは幼い子供のようなものだ
己の欲するままに求め行動する

だが、幼子と違うものは

その欲求がどれだけの規模の害意を撒き散らすか、だろう……



飽いた
いつものように生贄達から搾り取った生き血を捧げ、神への祈祷をするハーゴンの頭の中に、形を持たない意思として伝わってきたシドーの言葉がそれだった
ハーゴンは始めそれが自分の捧げたものに対してのものだと思い慌てて恭しく首を彼の前に垂れながら言った

「申し訳ございませぬ、我が神よ。直ぐに別の贄を用意いたしますれば…」

しかしその言葉は直ぐさま否定される。そうではない…と
神の言葉に意図が判りかねて首を傾げるハーゴンにシドーはわからぬか?とまるで幼児に言い聞かせるかのように意味を砕いて告げる

我が飽いたのはここでこうして贄を与えられていることぞ、と
まるで家畜のように飼い慣らされているこの現状が気に食わぬ、と
そう神は不機嫌にハーゴンに告げた
成る程一方的に与えられるこの状況は、見方を変えればシドーの言う通りに思えなくもないだろう

「仰りたいことはわかりました。ですが…」

言い分はわかった。だが現状そうしなければ完全なる復活を遂げられないのだ。それは破壊神にも理解できている筈だ
だというのにどうするつもりなのだと問うと、シドーはなんでもないことのように返した
今から復活の儀を執り行えばよいのだと

「は?!そのような…なりませぬ!」

いくら神の命でも聞けぬ、とハーゴンは必死に食い下がったがシドーは聞き入れようとはしなかった。ハーゴンの言うように今は完全に復活出来る状態ではないことは彼自身にだって理解出来ていた
しかしそれでも今の状態で居続けることがどうしても堪え難かった。己の欲求が通らないなどと、そのようなことを神と崇められるシドーが赦せるはずもなかった

いいから直ぐに言う通りにせよ、と頑としてハーゴンの言葉を跳ね除けるシドーにハーゴンはとうとう折れるしかなかった
半ばやけくそに、もうどうにでもなれと掻き集められるだけの準備をして復活の儀式を執り行ってみせた

しかしそんな付け焼き刃にも似た儀が成功するだなどという奇跡が起きようはずもなく、シドーの身体は世辞にも神々しさからはかけ離れた不安定な闇の形でハーゴンの前へと現れた

「我が神よ、やはり時期尚早だったのです。これでは…」

こんな姿ではとても神として地を統べることなど出来まい。経緯を知っているハーゴンならともかく、信者達がこの姿の神を見て誰が“そう”だと、思うだろう
…誰が思うものか

「神よ…今暫く辛抱なされませ。我らも1日もはやい貴方様の復活のために力を尽くして…」

言いかけたハーゴンの目の前で破壊神を模した闇がズ…と床に沈み足下まで這ってくる
ハーゴンがそれに気付き見遣った時にはそれはもう自分の足下に広がる影の中に入り込んでいた
同化した影はより色濃い黒となり、深い底無し沼を連想させるようなねっとりとした重さを感じさせた

「神よ…戯れも大概になさいませ。貴方のような存在が下の者の足下になど…っ?!」

言葉を遮るように影の中から細い腕のようなものが伸びてハーゴンの足に絡みつく
ひやりと冷たいそれに思わずびくりと身体を強張らせると、その反応に気を良くしたのか影の中に入ったままのシドーが更にもう一本増やしてもう片方を捕まえる
そしてそれはぐっと引き寄せる力でもってハーゴンの足下を掬い床に打ち付けるように座り込むような体勢にさせてしまう

「っく…」

臀部に襲う衝撃に呻くハーゴンの足を一本、また一本と黒い腕が捕らえていく

そしてそれらはハーゴンの足を左右に引き大きく開かせた
神の意図が分からず、ただ目を白黒させてされるがままになるハーゴンの下で笑っているかのように影がゆらゆらと揺れる

「神よ…何を…?」

震える声は怯えを孕み、シドーの加虐心を心地良く掻き立てた
ハーゴンの問いに答えることなくシドーは自在に動くようになった腕を伸ばして更に侵入を試みた。ローブの裾を捲りあげ、下穿きの間から腕を割りこませれば、見下ろすハーゴンの頬にあからさまなほどの紅が差した

「ぁ…そ、のような……っ…戯れは…」

言葉の拒絶とは裏腹にそれを振りほどくことはしない…もとい出来ないのだろう
こんな姿になろうとも相手は神。抵抗は反逆と同義と手を出せないでいるのだろう…
好ましい忠義だとシドーは思う。と、同時にそれが何処まで維持出来るかが気になった
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