青学
□愛しの眼鏡ノッポ君(乾貞治)
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出会いは、1年生のとき。
キッカケは、
席が隣と言うことと、お互いがテニス部だってことで
彼のことをあれこれ知るようになり”少しだけ”
仲の良いクラスメイト。・・・と、勝手に感じたこと。
愛しの眼鏡ノッポ君
「ねぇ、乾・・・?前から気になってたんだけど・・・」
1時間目の授業が終わった、5分間だけの休み時間でも
乾は、自分の席についたまま。
クラスメイトの誰とも戯れないまま。
乾は、私の声にピクリと反応して眼鏡を指先でおさえた。
「・・・井上、おまえは俺にこう言う。」
「なっ、何よ?」
乾の隣______自分の席について、私はレンズ越しの乾の目をじっと見上げた。
「『いつも持ってるそのノートは、一体何が書いてあるの・・・?』とな。」
「・・・・・・・!」
全く、その通り。
私が何も言えない様子にひとりで勝手に納得して、頷いた乾。
「残念ながら、これは俺のデータノートだからね・・・中身は極秘。
誰にも見せることはできない。」
眼鏡が不気味に光ってる・・・・・気がした。
クスっと笑う仕草は、何かを企んでいるようにも見える。
「ケチ。」
私は、唇を尖らせて乾をじっとにらみ上げた。
「ちょっと見せてよ。気になるじゃん。
ちょっとだけ・・・、ね?」
「ダメだ。」
「お願いしーまーすー!」
一歩引いてみよう。両手を合わせた。
これなら、乾だって・・・・・・
「ダメだ。」
「・・・・・っ。」
・・・やっぱりダメだったか。
「・・・井上。」
「何よぉー?」
「俺が昼休みに席を外した瞬間に、おまえがこのノートを狙ってる確立は100%。」
「・・・・っ!」
このひとは、どこまで鋭いのだろう。
データ計算?いや、違う。まるで・・・心を読まれてるみたい。
「残念だが、それは無駄だ。何故なら・・・・・」
「ふむふむ。何故なら・・・・?なら?」
乾は、そっと微笑んだ。
「・・・・っ!」
ああ、ビックリした。
突然笑顔を見せるなんて、”ある意味”心臓に悪い。
「肌身離さず、持ち歩いているからだ。」
満足気に言って、
乾は学ランの内ポケットにデータノートやらを押しこんでしまった。
「何よ・・・もうっ!・・・バーカ。」
なーんて憎まれ口を叩いちゃうけれど、
なんだかんだで”乾のお隣の席”は、結構楽しかったりする。
いつも、とんでもないことを発言するもんだから
私はいつだってドキドキ・・・と、言うかハラハラするのだ。