【ハリポタキャラ色々/短編集】
□月光の彼方へ・・・
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夏の長期休暇が残すところ、あとわずかとなると
私たちはウィーズリー家____隠れ穴で過ごすことが毎年の日課のようになっていた。
この日も、ウィーズリーおばさんが作ってくれたボリュームたっぷりの夕食を食べて
それぞれがベッドに入るまでの時間を、ロンたちの部屋で盛りあがっていた。
フレッドとジョージがロンにイタズラを仕掛けて、ロンが顔を真っ赤にして怒りだす。
誰がアンブリッジのモノマネがうまいかを、意味もなく競い合う。
お腹を抱えるくらいに笑い、この瞬間だけは胸の奥のさびしさが解けていてくれた。
そう。このときだけは・・・
やがて、誰かひとりのあくびが合図になり、
それぞれが自分のベッドへと入る瞬間があっと言う間にやってくる。
私が眠る部屋はジニーと一緒。
ジニーの部屋に、私とハーマイオニーの分のベッドが並ぶ。
「おやすみ」を、言い合い、私は開きっぱなしの窓とカーテンに手を伸ばした。
・・・けれど、その手を引っこめた。
「・・・綺麗・・・。」
まるで、この窓が絵画の額のように月が夜空を照らしていたのだ。
チラっと背後へと振り向くと、ハーマイオニーとジニーは既に眠りについている。
私は窓の淵で頬杖をつき、月を見あげる。
______マルフォイも・・・もう寝たのかな?
毎年、あんなに楽しみだった夏季休暇がこんなにも長く、果てしなく感じるのは
きっと、アイツのせいだと
ひとり、心のなかで悪態をついてみる。ため息と共に。
_______会いたいよ・・・マルフォイ。
早く、ホグワーツへと戻りたくてたまらないなんて。
マルフォイの声が、聞きたくてたまらないなんて。
あのぬくもりを感じたくて、たまらないなんて。
早く、マルフォイの姿を見つめたくてたまらないなんて。
どうかしてる、私・・・
さっきよりも深いため息と共に、頬杖を崩し、組み合わせた腕の上に
顔を突っ伏して目を閉じていたら・・・
頭のてっぺんを、何かがバサバサと触れた。
「・・・レオ!?」
鳥かごのなかにいないと思ったら、外を飛びまわっていたらしい。
小さな彼は翼をたたむと、嘴でくわえた手紙を突き出し
早く受け取れ!と、言わんばかりに首を動かす。
私は、レオの嘴から手紙を引き抜き、頭を優しくなでながら
手紙を開いた。
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まだ起きているか?大した用件ではないが・・・
外を見てみろ。今夜の月は綺麗だ。
D,M
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_______マルフォイ・・・!
心臓の音がたちまちうるさくなり、その音で
ハーマイオニーとジニーを起こしてしまうんじゃないかと、錯覚してしまう。
便箋の上を、なめらかに滑らせたような綺麗な筆記に、私は指先を這わせた。
そしてもう一度、月を見あげた。
ドラコは今どんな顔をして、どんな姿で同じ月を見あげているのだろう・・・。
ふたりを起こさないように、なるべく音をたたせないよう
そっと、ペンを握った。
「・・・レオ、お願いね。」
「え?また行くの?こんな時間に?
しょうがないなぁ・・・もう!」と、言わんばかりの「やれやれ」とも言いたげな顔で
彼は手紙をくわえて飛び立った。
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起きてたよ。
本当に綺麗な月だね・・・。
おやすみなさい、いい夢を。
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もっと書きたいことは、たくさんあった。
伝えたい言葉もたくさんある。
だけど・・・それは、新学期になって直接マルフォイに会ってからにしよう。
私は、マルフォイが飛ばした手紙に、そっとキスして
ベッドに入った。
マルフォイの元へと、手紙を届けに向かったレオの帰りを待ちながら________
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