【ハリポタキャラ色々/短編集】

秘めごと
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______嘘ぉー・・・






もっと早く来ればよかった・・・と、落胆したと同時に
肩からすべり落ちそうになる鞄をギュッと、つかんで抱えなおした。

今日はスリザリンとの合同授業。スネイプの魔法薬学と言う、
最悪ダブルパンチ。

温室に長居しすぎたせいで、席が埋まってしまっている・・・。
ハリーたちの間に入れてもらおうか・・・いやいや、
それじゃあ、この一時間お互い窮屈でたまらないだろうし・・・。

ハリーやハーマイオニーやロンは、私に心配そうな視線。
パーキンソンはお得意のクスクス笑い。

どうしよう、どうしよう。
出席をとるまでに席につかないと、私のせいでグリフィンドール減点は確実だろう。










「・・・・・・・。」








でも、唯一の空席は・・・・・、









「出入口の目の前に立つとは・・・我輩の進行方向を塞ぐ気かね?
それとも・・・君は今日、そこで立ったまま授業を受けるのか?」

「・・・・・っ!?」









この、ねっとりとした声。
ああ、やだやだ・・・!と、思い
振り返って見上げれば、スネイプが声と同じくらいねっとりした髪を揺らしながら
ギロリと鋭い目で私を見下ろしていた。

そして、スリザリンの奴らからは皮肉たっぷりの笑い声が響く。










「ミスター,マルフォイ・・・」











重たそうな真っ黒のローブを翻し、スネイプは一番後ろの席のマルフォイを見つめた。









「はい、何でしょう?先生・・・。」








マルフォイは、嫌味ったらしいくらい誇らしげな声でこたえる。








「大変恐縮だが・・・彼女を、君の隣の席に座らせて欲しい。
どうやら、彼女自身はそこで突っ立って授業を受ける気でいるようだが・・・
他の生徒が授業中に気が散るかもしれないのでな。」







またも、スリザリンの連中からバカ笑いがもれる。
今度のはさっきよりも大きく、あからさまだ。

マルフォイのプラチナブロンドがゆっくりと、さらさらと揺れ
振り向くと同時に薄青い彼の瞳が私をじっと無表情で見つめる。
悔しいことに、全身がギクリと強ばってしまった。

マルフォイは、数秒間だけ私を見つめるとプイッと顔をそむけ、
スネイプへと視線を戻す。






「・・・わかりました。隣にグリフィンドールの奴が座ると・・・
僕自身、授業中に気が散ってしまいそうなのですが・・・
先生の頼みなら、喜んで受け入れますよ。」

「すまないな。礼を言うぞ。ミスター,マルフォイ・・・。」








スリザリンの連中のバカ笑いは止む気配がない。
でも、こんなことでへこたれる私じゃない。

バカ笑いを続ける連中(特に腰ぎんちゃくのふたりと、パーキンソンに。)
に、ひと睨みしてやって・・・マルフォイの隣に乱暴に鞄を下ろし、
席についた。

パーキンソンはクスクス笑いこそ止んだものの「何で、アンタがドラコの隣なのよ」と
言わんばかりの恨めしそうな視線をぶつけて来たけれど・・・
当然、無視。







「・・・今日の授業は、実験の前に揃える材料について説明しよう。
我輩は、同じことは二度言わない。各自、ちゃんと覚えるように。
まず、一番大事なものは_________」








スネイプがチョークを握ると、周囲はやっと静かになった。
この授業は一番嫌いな科目だけれど、ここで覚えておかないと
グリフィンドールの生徒は、スリザリンの生徒の倍以上に痛い目に遭ってしまうのだ。










「・・・スネイプ先生の授業には、遅刻しない方が賢明だぞ。
まぁ、マクゴナガルの授業もそうだが・・・
スネイプ先生の場合は、グリフィンドールが痛い目みるからな。
この程度で済んだだけ、奇跡さ。」

「・・・・・・!」








その言葉こそ、どこかトゲがあるようだけれど
そっとささやくテノールは、普段のマルフォイからしたら考えられないような
優しい声。

どんな顔をしてるのかが、どうしても気になってしまい
そっと・・・隣を盗み見た。

表情、仕草は普段のマルフォイだ。
羽ペンを握ったまま、真っすぐ黒板を見つめている。

たったそれだけのことなのに・・・
ずるい。
そんな綺麗でカッコイイ横顔。
ずるい。
私ばっかりドキドキさせるなんて、ずるすぎる。

だから、私も黒板を見ながら
羊皮紙に実験の材料を書きこんだ。
どこでどう、その材料を入手できるか・・・なども。












「・・・遅刻したのは、たまたまよ。
そんなヘマを私が何度もするわけないでしょ。」








声をひそめ、視線は黒板と羊皮紙だけに集中させて・・・。

マルフォイがパラパラと教科書をめくるのを、ピタリと止める気配を感じた。
それから「フンッ」と、小さく鼻で笑ったことも。









「でも・・・まあ、ある意味ラッキーだったな。僕的には・・・。
この一時間は、君の隣にいられることになったんだ・・・。」

「・・・・・・っ!?」








どうして彼は、こうもサラッと私をどきまぎさせるのだろう。
その瞳で、その声で。

ハリーたちや、パーキンソンに怪しまれないように
必死に平然を取り繕う私。

そして、机の上でぶつかり合った私たちの手。
私は慌てて、その手を引っこめようとしたのに
ひとまわり大きいマルフォイの手が、私の手をつかまえて・・・握る。









「・・・・ちょっと・・・!見つかったら大変よ?」

「ここは一番後ろの席だ・・・見つかりっこない。」

「何よ、その自信・・・!?」

「だったら・・・こうしよう・・・。」










握り合う手を、マルフォイは机の下へと引っぱった。

授業中、隣の席、机の下でつなぐ手と手。
マルフォイの指がゆっくりと動き、私の指と絡み合う。

これは、かなり危険な秘めごと。



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