【ハリポタキャラ色々/短編集】

つかまえてサンシャイン
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「おーい・・・!ハリー!ハリー,ポッター!出て来い!
どこにいるんだ?」







僕は(いや、正確には”僕たち”だ。)、今すぐにでも練習に出れると言うのに
肝心のひとりが、”また”どこかへと行っているらしく
堂々たる遅刻の様子。









「おーいっ!ハリー,ポッター!部屋にいるならさっさと出て来・・・」








各自の部屋がある上の階へと向かって、更に声を張り上げた瞬間
ガチャリとドアノブがまわされる音と、ドアがパタンと閉まる音、
パタパタと小走りで階段を駆けおりる足音が聞こえた。








「・・・やっと来たか。遅いぞ!」

「ハリーなら、いないわよ。」

「・・・え?」










談話室へと降りて来たのは、ハリーではなく
“彼女”だった。
部屋で読んでいたのであろう本を片手に、僕の目の前へとスタスタ歩み寄る。










「30分くらい前・・・だったかな・・・
ロンとハーマイオニーと一緒に、談話室にいたけど
寮を出てどこか行ったわ。」









僕の目の前に立つ彼女の長い黒髪が、光をはじくように揺れて
かすかに漂う甘くていい香りに、ついついクラッと来てしまい
間抜けすぎる顔になってしまう。
・・・おっと、いけないいけない。










「何っ!?どこに・・・!?」








彼女はチェリー色の小さな唇をすぼめて、肩をすくめる。
「さあね・・・」と。








「でも・・・、ハリーたちが寮を出る前にひとこと言っておいたわ。
感謝しなさいよ。」

「何を・・・?」

「クィディッチの練習に遅刻なんかすると、
普段の何倍もクィディッチ熱血バカがうるさくなるわよ。ってね・・・。」

「ね・・・っ、熱血バカだと!?」










彼女はイタズラを仕掛けたように、舌を少しのぞかせて笑った。









「だからきっと、もうじき戻ってくるはずだし、そうカッカしないの!
全くもう・・・!談話室にまで箒持ちこんで・・・」










「アハハハ」と、何がツボにハマってしまったのかわからないが
彼女は声を出して笑う。










「な・・・っ、何がおかしいんだよ!?」

「本当に・・・オリバー・・・あなたってば、クィディッチばっかね。
寝ても覚めてもクィディッチクィディッチクィディッチ・・・」

「・・・いいだろ別に!」










彼女の笑いは、ピタリと止んだ。
その代わり今度は少し不機嫌そうな顔になっている。








「あら、悪いとは言ってないわ。
ただ・・・少しは・・・、」

「少しは・・・何?」











彼女の視線が、チラッと持ち上げられて
僕の目を覗きこまれる。
僕の瞳の色よりも濃い、どちらかと言えばブラックに近いブラウンの瞳で______・・・










「オリバー,ウッド・・・!
少しは、あなたの近くにいる女の子のことを・・・見てくれたっていいんじゃない?」

「・・・・・っ!?」









________少しは・・・!?見る!?それって、君を・・・!?









「つまり・・・それって______」

「・・・あ、ほら、噂をすればナントカよ!
ハリーが戻って来たわよ!」








僕は、ゆっくりと振り返った。
談話室の扉が開き、まるで落とし穴にハマらないように
ビクビクしながら歩くようなハリーがそこにいた。










「ハリー!すぐに支度しろ!みんな待ってるんだからな。」










ハリーは、ビクッと全身を震わせると黙ったまま頷き
急いで自分の部屋へと戻って行った。








「ほらほら、あんまりハリーをしごかないの!
じゃっ、私は部屋に戻るわ。練習頑張ってねー!」

「あ・・・、おい!」







僕が呼び止めようとしても、彼女はお構いなし。
サッと背を向け、本を広げながら部屋へと引っこんでしまったのだ。








「・・・・・。」








彼女に向かって伸ばしかけた手を引っこめ、ギュっと拳を握り、
ゆっくりと開いた自分の手のひらを睨んだ。
自然とこぼれるため息。







_______わかっちゃいないな・・・







君は、何もわかっちゃいない。

僕がどれだけ君を見つめていて、君を思っているかなんてこと。
君は、ちっともわかっちゃいないんだな・・・。

その日、君と話したことを思い出すんだ。
君の仕草を、
君の笑顔を、
その日の君を全部思い出して、何度も何度も
君のことを思うんだ。
それも・・・気づけば一日中だ。

誰も聞いていない場所で、小さく君の名前を呼ぶだけで
心の奥がむずむずとしてしまうような、
だけど、少し嬉しくなってしまうような
そんな感覚なのに。

「クィディッチ熱血バカ」の僕だって
「恋」と言うものくらい、わかっているのに。

君が好きで好きで、叫びたいくらいだ。

こう見えても、僕は臆病だから
あと少し・・・ほんの少しの、勇気が出たら
君にこの気持ちを伝えよう。



誰もいなくなった談話室。
僕はついさっき、彼女が軽やかなステップを踏むようにしてのぼって行った階段を
じっと見上げながら、小さく「好きだ・・・」と
つぶやいた。



++END++

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