【ハリポタキャラ色々/短編集】

Last christmas
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クリスマスの今夜だけダンスホールとなっている大広間から
ワルツだったり、クリスマスソングだったり、楽しそうな笑い声や話し声が聞こえてくる。
エントランスを睨みながら膝を抱えて階段に座った。
きらびやかなドレスにしわが出来てしまうことも、
誰かに踏まれて汚れてしまうこともお構いなしに。

クリスマス一色に染まったエントランスの向こう側。
あそこはもう自分とは無関係の場所だと思う。






「おっと、ごめんよ」






ドレスローブを着たひとりが、私のドレスの裾を踏みかけて
慌ててその足を引っこめた。
クリスマスの夜にひとりでこんな場所に座りこむ私に、
ささやかなる哀れみの視線を投げかけながら、カップルは通りすぎて行く。






_______セドリックは今ごろ、チョウと・・・






白くて綺麗なチャイナドレスを着たチョウとセドリックを思い浮かべて
ひとり勝手に虚しくなる。
元はと言えば、私が悪いのだ。
ささいなことではじまったケンカだった。
クリスマス前にセドリックは各寮の女の子たちからダンスのパートナーにと
誘われたり、囲まれてばかりいて・・・
それを頻繁に目にしてしまって、醜い嫉妬心に駆られてしまったのだ。

セドリックはちゃんと断ってくれたのに。
パートナーはもう決まっているからと。

元々優しい性格のセドリックだ。おまけに超がつくほどのハンサム。
だから心配だったのかもしれない。
ああして誘われてばかりいて、嫌な顔ひとつしないで丁寧にひとりひとりに断って行く。
それでも本当は、
その女の子たちの中にパートナーにしたいと思っていた女の子がいたのかもしれない。
私なんかじゃパートナーに不釣り合いなのかもしれない。
それなのに私、バッカみたい!
セドリックは何色が好みなのかな?
どんなデザインのドレスだったら・・・なーんて考えを膨らませていて
ふと、そんな自分がバカバカしくちっぽけに感じてしまったのだ。






「綺麗で可愛い女の子たちに誘われているようだし、
私なんかがパートナーじゃつまらないでしょ?
いっそのこと、彼女たちの中からひとり選んだ方がよかったんじゃない?」






そう言い放った後に後悔しても既に遅かった。
絶望そのものな顔をしたセドリックはしばらく黙りこんだ。
すぐに謝ればよかったのに、変なプライドが邪魔をする。






「・・・わかった。そうするよ。
じゃあ、君も他のパートナーの方がいいのかもしれないな」






自業自得だ。
こんなことを言われてしまっても、私には何も返す言葉なんかない。

クリスマス。とても特別な日。
他の誰でもないセドリックと過ごせたなら_________・・・・・


また誰かがこちらへと歩いて来たようだ。
足音が聞こえる。
ここにいても邪魔になるだけだ。
寮には当然ながら誰もいないだろうけれど、帰ろう。
部屋でひとりゆっくりしよう。






「せっかくのクリスマスなのに、もうお帰りかい?」

「セド_______・・・・・っ」






腕をつかまれ、引っぱられ、全身が強ばった。
足音の主はセドリックだったのだ。
ふり向きざまにそれを知って、たちまち鼓動が高鳴る。

だけど・・・チョウはどうしたのだろう。
セドリックの隣に彼女の姿はない。






「パートナーの姿が見えないようだけど・・・?」

「・・・あっ、あなたこそ!レイブンクロー一の美人のパートナーは?」






数段下に立つセドリックは、じっと私を見上げたまま
何かをふくめたような笑みを浮かべた。






「チョウは・・・行きたかった彼の元に行かせた。
僕と同じだ。
彼女にも・・・本当は一緒にクリスマスを過ごしたい相手がいるんだ」

「・・・と?にも・・・?」

「本当はずっと・・・クリスマスは君と過ごしたいと思っていた・・・
だから、君が他の男に誘われる前に・・・
勇気を振り絞って誘ったんだ」






セドリックにじっと見上げられるのはとても不思議だ。
あんなに背が高いから、いつもは私が彼の顔がよく見えるように
顔を持ち上げているのに。
だから余計にドキドキしてしまう。






「う、嘘・・・」

「嘘なもんか!」






セドリックが軽やかに階段を駆け上がった。
あっという間に立場逆転。
と、言うよりはいつものように戻る。
セドリックは私の立っている場所より一段高い場所へと立った。
普段よりももっとセドリックの背が高くなる。






「・・・好きだ!・・・いや、そんなんじゃ足りない。
愛してる!愛してるんだ!」






天にも昇る、どんな魔法も敵わない幸せな言葉を今、
セドリックはどんな表情で言ってくれたのか
彼の目を、顔を、じっと見つめたくてたまらなくなり
私はつま先を持ち上げ、首を思いきり伸ばしてみた。

だけど、愛してるの言葉をセドリックがどんな顔で言ってくれたのか
わからないままだった。

私がつま先立ちになったと同時に、キスが降りてきたのだから。






「さあ、パーティーに戻ろう!」






夢心地のままセドリックに手を引かれ、
クリスマスと言う空間を、場所を、彼とふたりで分かち合う。
ワルツを踊り、ふざけ合いながらケーキを食べる。
そうしてまたワルツを踊る。
ラストワルツの後は馬車の中で再びキスをする。



セドリックとふたりで過ごせたクリスマス。
でも、これが最初で最後となってしまった私たちのクリスマス。
ラストクリスマスだなんて、誰が予想しただろう



++END++


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