ロミオとジュリエットな魔法使い__Secret love__

【8th Secret love】
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「君を・・・マルフォイなんかといさせるべきじゃなかったな・・・。」




あのときのハリーの表情は、今でもクッキリと私の脳裏に焼きついたままだった。
唇をかみしめて、眉をぐっと曲げて、エメラルドグリーンの瞳を揺らしていたハリー。
まるで・・・苦痛に必死に耐えるかのような顔だった。

あれ以来、何となく私とハリーの間にしこりが発生してしまった気がする。
それは目には見えない小さなもので、痛みはない。
だけど、そのしこりに触れれば痛くなってしまいそうで私もハリーも
あえて触れないようにしている感じだ。
触れなければ大丈夫。痛くないのだから。

でも_____

一歩間違えて触れてしまったらどうしようと、
臆病で弱虫な私は心の隅っこでビクビクしている。

これは絶対、ハリー本人には言えない。
もちろん、ハーマイオニーやロンにだって。
ハリーが嫌いと言う訳では決してない。
むしろ、大事な友達だと心から思っている。
大事な友達だからこそ、私たちの間に発生したしこりには
なんとしても触れたくないのだ。











*





毒入りのハチミツ酒を飲んだせいで、命の危機があったロン。
ハリーとの間の小さなしこりへの憂鬱。
ドラコに対する心配と不安。
決して気の休まることのない日々だったけれど、ひとつ
嬉しいことがあった。

ロンとハーマイオニーが仲直りしたのだ。

一時はもう、訪れることがないのかと思っていたいつもの風景。
大広間で4人揃って食事をする。
食後に日刊預言者新聞をロンの隣で読むハーマイオニー。
その向かい側に、私とハリー。

「雪を降らさないで!」と、ロンを叱るハーマイオニーの声。
そんなふたりのやり取りを眺めていると、
心の奥のもやもやが、少し解れた。









「相変わらず、その本に真剣なのね・・・」










ハリーは相変わらず上級魔法薬の本を手離さずに、わずかな暇さえあればその本を開き
1ページずつ、ひと文字ずつ、熱心に視線を本に這わせている。








「ん?あ、ああ・・・」









ハリーはその本を読んでいるときに話しかけられると、決まって態度が素っ気なくなる。
本を他人に触れさせることすら拒むように。
余計なお節介心がわいてしまった私は、ページをチラっと覗こうとした。
だけど、ハリーはそそくさと本を閉じる。







「ハリー・・・ケイティよ。」










ハーマイオニーが、本に夢中のハリーの顔をじっと覗きこんだ。
ハリーは本を閉じてもまだ何か考えごとをしているようで
その声は聞こえていない。
片方の耳からは入っただろうけど、もう片方の耳からスルリと抜け出てってしまい
大広間の喧騒に掻き消されてしまう。








「ケイティ,ベルよ・・・っ!」











ハーマイオニーが少しばかり声を荒らげると、ハリーはやっと我に返ったように
ハッとして、ケイティの後ろ姿を視線でとらえた。
そのままケイティを追いかけるように立ち上がった。
やっぱり、本を片手に。

私は、ゴブレットに残ったかぼちゃジュースをちびちびと飲んだ。
喧騒にまじりながら、ハリーとケイティの会話が聞えた。







<ケイティ、具合どう・・・?>

<・・・誰に呪いをかけられたか、わからないの。
思い出そうとしたけど・・・どうしてもわからない・・・>











かぼちゃジュースを飲み切り、もう一杯くらい飲もうかとピッチャーに手を伸ばした瞬間
かすかな香水の匂いがふわっと、私の鼻をくすぐった。
この香水の香りは・・・







________やっぱり・・・






ドラコだ。
ドラコが私の席の後ろを通り過ぎ、大広間の中へ中へと進んでいる。
思わず振り向き、その後ろ姿を瞳に収めようとしたが
ドラコは真ん中でピタリと立ち止まった。
ハリーとケイティがドラコを見つめているのだ。









「・・・・・!」










ドラコの様子がおかしい________

そう私が感じた瞬間、ドラコは足早に踵を返した。
すぐさまハリーは大広間を出て行くドラコの後ろ姿を険しい表情をしながら、
追いかけて行った。







とてつもない胸騒ぎがする。
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