夢小説 SD


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晴れた日に屋上で昼寝をすることは、流川楓の日課でもある。
昼休み。
流川はいつものように教室を出て、屋上へと足を運んだ。



「・・・駄目か」



屋上へと上がって来たものの、雨で地面が濡れている。
小降りな雨だけど、これでは寝転がれない。




_________どうするかな・・・




流川はしとしと降る雨を睨みながら、頭をかいた。
昼休みの教室は、騒がしくて昼寝には適さない。



_________そうだ・・・!




真下に見える体育館が、目に入った。
今日の昼寝場所はあそこにしよう。
体育倉庫にはマットもあることだし。
扉を閉め、階段を軽々と二段ずつ飛ばしながら、
新たな昼寝場所へと足を速めた。








_________先客!?




流川が扉に手をかけようとしたとき、ダムダムと、バスケットボールをドリブルさせる音が中から響いてきた。
いったんは扉から手を離したけれど、再び手を伸ばした。
絶好の昼寝場所は他にないに違いない。
そっと入って、
倉庫の中で、昼寝をしよう。
ゆっくりと扉を開いた。倉庫へと歩く途中の足元に、ブレザーが脱ぎ捨ててあった。
女子生徒が一人でバスケをしているらしい。





______誰だ?




ポケットに手を突っ込んだまま、この制服の持ち主の後ろ姿を眺めてみた。
その人物は流川と同じクラスで、隣の席である
藍沢琴美。
高校への入学までバスケの本場、アメリカに住んでいた。
日本人の父親と、アメリカ人の母親を持つハーフである。
そのせいか、愛らしい容姿で入学早々
男子生徒の注目の的となっている。
(本人は、それに全く気づいてもいない。)




______何でこいつがここで、バスケなんかしてるんだ!?




小柄で、大人しそうな雰囲気を持つ琴美は、
図書室で分厚い本などを読んでいるイメージだ。




_________以外だな・・・





琴美はブラウスの袖を捲り上げ、ドリブルとシュートを、ひたすら繰り返している。
手首にはめているナイキの黒いリストバンドは、
琴美の細い腕だとやたらと大きく見えて不格好だ。
バスケに夢中になっているせいで琴美は、
流川の存在に全く気づいていない。
レイアップシュートも簡単にこなした。
そのはずみで、琴美の耳たぶにある小さいピアスがキラキラしたのを、流川は
なんとなく見つめていた。
最後にもう一本、
レイアップシュートを決めると、
琴美は小さくため息をつき、腰に手をあてた。
バスケットボールは、
しばらくダムダムと弾み、流川の足元へと転がって行った。
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