夢小説 SD
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「・・・ほい」
流川がボールを拾い上げて手渡すこの瞬間に、
初めて琴美は流川の存在に気づいた。
「あ、あれ?流川君・・・、ありがとう」
「おめーは・・・、」
「あ、同じクラスの藍沢琴美です!」
「・・・そうだったな・・・」
二人がまともに会話を交わしたのは、これが初めてかもしれない。
流川は教室にいても常に昼寝をしていたし、琴美は琴美でやたらと男子生徒に話しかけられていたからだ。
なんとなく気まずい沈黙を搔き消すように、琴美は再びドリブルを始めた。
「藍沢・・・、おめぇ・・・・バスケするんだな」
「ええ。してたわ。バスケはね、大好きだったの」
_______過去形だ
流川にはそれがなんとなく、ひっかかった。
「ねぇ、流川君はバスケするんでしょ?背だってこんなに高いもんね・・・!」
琴美は爪先立ちをして流川を見上げる。
流川は頷いた。
「バスケは・・・する。中学のときも・・・、バスケ部に入ってた」
「ぅあーっ!やっぱり。流川君は、バスケする人なんじゃないかなって思ってたの!じゃあ、じゃあさ、この湘北でもバスケ部に入るってことでしょ?」
流川は黙って頷いた。
琴美は流川を見上げるようにして見つめると、
とても切なそうに笑う。
「・・・いいなー。バスケがやりたいだけ沢山できるなんて、素敵なことよね!頑張ってね」
琴美の切なそうな顔は
流川の見間違いだったのだろうか。
あははと笑うと、琴美はブラウスの袖を下ろし
脱ぎ捨ててあったブレザーに腕を通す。