夢小説 SD


2
1ページ/10ページ


快晴。
こんな日こそ、屋上での昼寝に最適だ。
だけど流川は教室を出ると、階段を降りて行った。
体育館を目指して。
べつに、藍沢に会いたいからだとか、そんなんじゃない。
そう自分に言い聞かせてみる。





______今は眠くねぇんだ。




一、二時間目は英語。三時間目は数学。四時間目は世界史。
午前中は流川にとって、退屈な授業ばかりだった。
おかげで四時間の授業を、まるまる昼寝に費やした。
だから今は眠くないのだ。
体育館に行くのは、なんとなくだ。
藍沢目当てなんかじゃない。
流川は何度も自分にそう言い聞かせてみた。
それなのに、体育館へと向かう足はどこか急ぎ足へと変わっていたのだった。





* * *




「あれぇー・・・?流川君、屋上でお昼寝じゃなかったの?今日はいいお天気だからてっきり・・・、」



相変わらず琴美はブレザーを脱ぎ捨て、
ブラウスの袖を捲り、ボールを手にしている。
今日も細い腕にはナイキの黒いリストバンドがはめてある。
今日は
二人がこうして昼休みの体育館にいるのは、
けっこう頻繁になった。
教室内ではろくに接触もないのに、この場所ではお互い、
仲の良い友達同士≠ンたいなものだ。




「・・・午前中、寝過ぎた。」




流川も倉庫からボールを持ち出し、ドリブルをする。




_______あ、そっか!




琴美は思い出したように笑った。




「午前中ぐっすり寝てたものね。二時間目の英語のとき、私がシャープペンでつっついたの、気づかなかったでしょ?」



流川は頷き、シュートを決める。




「爆睡してたから・・・」




琴美は、まだクスクスと笑っている。
毎日ではないけれど、
流川がこうして体育館に来てくれることが、
本当は嬉しくてたまらない。
だけど、そのことを流川に知られるのは照れ臭い気がしたので、
誤魔化すように、琴美も流川と同じようにシュートを決めた。




「・・・いいな、それ」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ