夢小説 SD


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* * * *

ベッドのそばのサイドテーブルにある目覚まし時計が止まっている。
電池が切れてしまったらしい。



「え・・・?嘘!?今、何時?」



いっきに現実に引き戻され、今、
自分が置かれている状況を理解すると布団を払いのけ、
携帯を開いた。



「げーっ!もうこんな時間ー!」



叫びにもちかい声で、ぬくぬくと眠っていたダイナも目をまんまるに見開いた。



「とにかく・・・急がないと!遅刻する・・・っ!」



急いでパジャマを脱ぎ捨て
ハンガーに吊るしてある制服に腕を通し、
寝癖で乱れた髪にブラシをあてる。




「あー・・・っ!もう・・・、今日は陵南との練習試合なのに・・・!何でこんな日に寝坊するかなぁー・・・」



鏡に向かってのんびりと髪を結い上げる暇なんてない。
歯を磨き、顔を洗い終えると、鞄を引っつかんだ。



「じゃあダイナ、行ってきまーす!
ごはんとミルクは下に置いてあるからね!」




あっと言う間にバタバタと飼い主が家から飛び出して行くと、
一瞬の嵐が去ったように静けさが戻る。ダイナは再び眠りに落ちた。
こういうときに限ってバスはなかなか来ないもの。
琴美は時刻表と腕時計を交互に睨んだ。



「あちゃー・・・、ダメだ。次のバスだと集合時間に間に合わないや・・・」



宙を仰ぐ。一分一秒すら無駄にはできない。



_______よし!こうなったら・・・




鞄をしっかりと持ち直して駆けだした。
駅まではそう遠くない。走れば間に合うはず。
走って、走って、見慣れたコンビニが見えてきた。
ここまで来れば駅まであと少し。





_______やだ!嘘・・・!?




突然、
胸が締めつけられるような苦しみが襲いかかる。



________こんなときに発作なんて




コンクリートの地面に転倒してしまった。
そのせいで膝をすりむき、ヒリヒリした痛みが走る。




_________どうしよう

_________どうしよう

________急がないと、間に合わないのに・・・




締めつけられる胸の苦しさと痛みに耐えながら、
再び立ち上がってはみたものの
再び走り出すことができない。




__________そんな・・・




「藍沢!」

「!?」




キッと、勢いよく止まるブレーキの音と共に
自分の名前を呼ばれ、
琴美は胸を抑えつけながら振り向いた。




「・・・流川君!?」

「大丈夫か!?発作か・・・!?」




流川はその場に乱暴な手つきで自転車を倒すと、
琴美の手を取った。




「・・・大丈夫。こんなの、しょっちゅうだから・・・・っ。だから、流川君は早く行って。もうすぐ集合時間・・・」

「どあほぅ・・・!」




流川は地面に倒れた自転車を起こす。




「膝のケガは少し我慢しろ。とりあえず乗れ!」

「でっ、でも・・・」

「さっさと乗れ!おめーを置いてけるわけねーだろ」




_______やめてよ。そんな言い方。


そんな優しさ。期待してしまう。




でも、背に腹はかえられない。
琴美も自転車に乗り、
流川の背中にしがみついた。



「大丈夫だ。このまま行けば間に合う」

「ごめんね・・・こんなときに・・・。」

「気にすんな。どあほぅ」
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