夢小説 SD


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* * * *


桜木軍団のひとり、
水戸洋平は今日もバスケ部の見物
(冷やかしとも言える)に来ていたが、
練習が終わり桜木を待つ時間潰しに。と、
体育館の裏口にしゃがみこみ、煙草をふかしている。



「あー・・・・っ! 見ちゃったぞ!」




制服に着替え終えた琴美がやって来て、ずかずかと洋平の元へと歩み寄った。
洋平は特に驚く素ぶりも見せない。



「あーあ・・・・、
十組のクラス委員さんに見つかっちまたか」



煙草をくわえたまま、わざと驚いて見せた洋平。



「桜木君待ってるの?」



琴美は、よいしょと洋平の隣にしゃがむ。



「ああ。まぁ、そんなとこ」

「多分、もうすぐ来るんじゃないかなぁー・・・。
体育館にはもう誰もいないし、部室で着替えてるはずよ」

「琴美ちゃんは? 練習終わったのに何でまたここにいるんだ?
もう帰るんだろ?」

「鍵当番よ。今日は私が戸締り確認とかするの!」



琴美は手にしていた鍵を指に絡め、
くるくると回す。




「そっか・・・・大変だな」



洋平は二本目の煙草を学ランのポケットから出し、
くわえた。
マルボロのメンソール味の煙草を。
琴美は二本目を吸う洋平をじっと見つめる。



「ん? 何だよ、琴美ちゃん。
怖い顔してさ。先生に言いつけてやろってか?」

「洋平君、私にも一本ちょうだい!」

「え・・・・っ!? 琴美ちゃん吸うの?
ってか、吸えるのか?」



洋平は再びポケットから煙草を取り出すと、
一本抜き出し、それを琴美に渡した。



「ありがと・・・・」



ぎこちない手つきでくわえ、
洋平の100円ライターを借りて火をつける。
洋平はそんな光景を、
まるで何かの動物を眺めるようにじっと見つめた。



「これで共犯」



そうは言ってみたものの、
やっぱり煙草はちっとも美味しいものではなかった。
煙は目にしみるし、咽てしまう。




「お、おい・・・・大丈夫か?」

「平気!」



この煙草から流れる煙のように、
自分の気持ちも流れて消えて行ってしまえばいいのに。
琴美は洋平の隣でひとり、
そんなことを考えた。




「洋平君、灰皿貸してくれない?」

「おう」



まだ半分も吸っていない煙草を揉み消した。
洋平は言わんこっちゃないと笑う。



「ねぇ、琴美ちゃん」



洋平も吸い殻を灰皿に押しこんだ。
(その場に捨てると、
あとでそれを見つけた教師たちがうるさそうだからだ。)



「ん? 何?」
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