Novel

□甘い紅茶
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今日は、雨が降っていた。ただでさえ寒いのに、寒すぎる。ぼくは小走りで砦に向かった。多分創也は先に行ってしまったのだろう。今日は塾もないし、一緒に行こうと思ったのにつれない奴だ。
ばしゃばしゃと水を跳ね飛ばし、がちゃっと砦の鍵を開けた。
「おかえり、内人君。」
創也は振り返りもせずに言った。紅茶の温度を計っているらしい。
「寒い」
ぼくは不機嫌そうに言った。
するとふわふわのタオルを投げてくれる。
「さんきゅ。」
ごしごしと頭を拭く。
「はい。内人君。」
拭き終わった頃、とんっと僕の前に紅茶のカップが置かれた。
「あれ...」
そのカップに入っているのはいつもと違う色の液体だった。
「何?これ。」
「さて、何でしょう?」
そう言われてうぅーっと考える。乳白色のその液体は、微かに甘い匂いがして、それでもその正体を掴むことは出来なかった。仕方ない。ぼくはそのカップに口をつけた。
「どうだい?」
口の中に広がったのは甘さとまろやかな味わい。暫く考えて、尋ねる。
「牛乳?」
「そ。今日は紅茶をお湯じゃなくて牛乳で煮出したんだ。隠し味に蜂蜜も入れてみたんだけど。」
だからほんのりと甘いのか。
「ありがと。美味しいよ。」
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