Novel

□聖夜の誘い
1ページ/8ページ

息も真っ白になる、師走。
僕は本を数冊持っていつものように砦に来ていた。
「よう。創也。」
「やあ。」
顔も向けずにそう挨拶したっきり、会話は全くないがいつものことだ。
ごろりとソファーに横になり、つかの間の平和を愉しむことにする。
「内人君。」
読んでいた本がものすごく良いところなのに、創也が話し掛けてきた。なんて間の悪い奴だろう。
「何?今凄く良いところだったんだけど。」
「何読んでるんだい?」
「夢水清志郎シリーズのそして5人はいなくなる。」
「あぁ、それ○○○が犯人。実は〜で〜だから〜なんだ。」
何の配慮もなくばしっとネタバレする創也。勿論伏せ字にしたのは僕の粋な計らいだ。
「言うなよそれ..」
「まだ読んでなかったんだね。ごめんね。」
全く反省していない声で言う創也。やっぱり冷酷非情なことこの上ない。
「で、内人君。」
「うん?」
「カレンダーが11月のままだね。」
「あ、ほんとだ。」
創也にしては珍しい。いや創也はパソコンに向かってばかりだしカレンダーなんかさして気にしてないのか。べりべりと捲っていく。…ちょっと待った。
「もしかしてそのためにぼくを呼んだの?」
「悪い?」
にっこり微笑む創也。がくっと肩を落とすぼく。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ