Novel

□にこいち
1ページ/3ページ

「創也さま。お父上からです。」
使用人に差し出された箱を開封すると、本と手紙が入っていた。
“トム・ソーヤの冒険”。
子供向けの簡単な方じゃなく、原作のそれは茶色くてずっしりと重く、金の文字が良く映える。でもそれよりぼくが引っ掛かったのは、名前。“トム・ソーヤ”かぁ…何となく、親近感が湧く。
ぼくはすぐに厚ぼったい表紙を捲った。
+ー+

読み終わったあと、ぼくは心の底からトムソーヤに憧れた。
こんなにわくわくしながら読んだのは、初めてかもしれない。
「あっ」
そういえば、手紙のことを忘れていた。ありふれた茶封筒に、ありふれた便箋が入っている。
ぼくはそれを開いた。
────

多分、もう読み終えたのだろうね。
気に入ってくれたら嬉しい。父さんのお気に入りの本だよ。

────
署名も、何もない。でも確かに暖かさを感じた。ぼくはふっと表情を緩めた。7年生きてきて、数える位しか会ったことのない父さんだけど、やっぱり父さんは父さんだ。ぼくは気になる本があれば、何を置いても先に読む。それを知ってて、父さんは..

ぼくはランドセルにトムソーヤを詰めて、明かりを消した。もう、11時だった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ