Novel

□にこいち
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「竜王君。」
ぼくがトムソーヤを読み返していたら、誰かが話し掛けてきた。
「竜王君も、トムソーヤ好き?」
にこにこと笑いながら屈託なく話し掛けて来る彼は、同じクラスの内藤内人。
「君も、知ってるの?」
「うん。こんな分厚いのじゃないけど。ぼくも大好きなんだー。創也君は良いな。名前、トムソーヤみたいで。」
ぼくもそんな名前が良かったなーとぼやく彼。ぼくと同じこと、考えてる。
「いつかトムソーヤみたいな冒険したいな。」
楽しそうな口調で語る内藤君。
「創也君も─」
キーンコーンカーンコーン
無情にも、チャイム。
席につく内藤君を見ながら、ぼくは思った。

いつか絶対、その夢を叶えてあげる。

叶えてあげるから…

あれから僕と内藤君は一回も話さなかった。そのままクラスが変わって、7年の月日が経った。僕は君の夢を叶えるために、鍵を渡す。早く冒険に行こう?

僕たちは二人合わせてトムソーヤなんだからね。

意外そうな顔をした君を見て、僕はにやりと口角を上げた。

fin..
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