浅い夢2
□小さく触れる
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「伊東さん!これこれ、これ何て読むんですか?」
僕が真選組屯所の廊下を歩いていると、後ろから追いかけてきた彼女。彼女は女の身でありながら、真選組隊士として多くの隊員の信頼すら集めている。
そして彼女は勤勉でもあるようで、たびたび書物を読んではわからない字などがあると僕を頼ってくる。
たぶんそうなのである。
「これはね…」
読み方を教えると共に、語句の意味も教える。その隙にチラと、彼女の顔を盗み見る。
つもりだったのだが、彼女と目が合った。
「あっ、あっ、すいませんっ、つい!」
「つい」って…
慌てふためいて顔を赤くする彼女。
これは…僕は期待してもいいのだろうか?
だけど…
「じゃあまたわからないところがあったら聞きにきてくれればいつでも教えるよ」
そう言って、僕は彼女の頭に手を置いた。
君には、変な期待をさせてはいけない。
僕は君が好きだけど、でも、君にはこの想い、悟らせられない。
これから僕の、することを思えば。
君を巻き添えにするようなことは、できない。
僕は君に
小さく触れる
ことしかできない
(できれば、もう少し)
企画サイト「鴨をice」様に提出させていただきました。