【君の声が聴こえる・3】
※夢主が人魚設定





また逢おう。

交わした約束通り、少年と人魚の少女は幾度となく逢瀬を重ねた。
逢う場所は決まって浜辺にある岩の影。
彼女曰く、本来なら人間に逢うのはいけないことなのだそうだ。

なら自分と逢うのもまずいんじゃないのか。
少年は問うた。
けれども少女は首を振り、大丈夫だというように微笑む。
彼女を困らせている、その自覚はあるのに、浜辺に向かう足を止められない。
何故なら、自分はきっと、彼女のことを―――。


「シャイン」


今日もまた、スパーダは彼女の許へと足を運ぶ。
岩の影に隠れるように砂浜の上に座っていたシャインは、スパーダの姿を認めるとぱっと表情を明るくさせた。

ぱくぱくと小振りな唇が動く。
相変わらず、そこから発せられる言葉は耳に届かない。
けれど。

いらっしゃい、スパーダ。

そんな声が聞こえた気がした。


「ほら、この前言ってたカメラ。持ってきてやったぞ」


シャインの隣に座り込みながら、持っていたそれを手渡す。
するとシャインは子供のように瞳を輝かせ、渡されたそれを興味深げに観察しはじめた。


“これでしゃしんを撮るの?”


さらさらと、砂の上にそう文字を書き連ねて首を傾げるシャイン。

言語が違い、その上スパーダにはシャインの声が聞こえない為、必然的に会話は筆談という手段を取らざるを得なくなる。
幸いこちらの言葉を解することのできたシャインは、スパーダが文字を教えてやるとみるみる内に吸収していった。
ちなみにスパーダも同様にシャイン達人魚の文字を学ぼうとしたのだが、勉強嫌いの彼がものの数分で匙を投げてしまったのは、当然の結果である。


「そーそー。ここにあるシャッターを押すだけでいいんだ」

“撮ってみてもいい?”

「ああ。貸してみな」


シャインの手からカメラを抜き取り、頭より斜め上に掲げる。
その際ちょっぴり勇気を出して、あくまでさりげなく、彼女の細い肩を抱き寄せてみたり。




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