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□Kaleidoscope.
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ロックオンはセックスは上手い方だ。



いや、俺は奴としかヤったことがないから他の人間のことなど分からない。
愛撫とか前戯とか、本当に俺が気持ちいいと思うところを突いてくる。
普段はひょうひょうとして軽いイメージがあるが、実はベッド上では真剣で丁寧。情熱的で時に冷静。

こっちが恥ずかしくなってしまうような深いキスとか、焦らすような愛撫を受けると、全身がぴりぴりして途端に俺の身体が震え出す。
あの細くて長い指は俺の中でかなり特別な存在だ。
不器用な性格とは正反対に、その指が作り出すあの巧みな動きは、恐らく一度体験したらやめられなくなる。
言葉では言い表せない程、彼のセックスは時と場合によって様々に色を変える。

「なんで毎日グローブをしているんだ?」

以前ロックオンに聞いたことがある。
そうしたら彼は笑って

「お前とのセックス以外に外気に触れさせない為」

と言って俺の額にキスをしたのだった。


今夜も俺はロックオンに身体を求められる。
彼の部屋でシャワーを浴びた後、ベッドに寝転がってあとは待つだけ。
ロックオンはシャワーは短い。
ほんの少し目を閉じているだけで、すぐにバスルームから茶色の髪を拭きながら出てくるのだ。


……

「お待たせ、刹那」

気分がいいのか鼻歌を歌いながら、シャワー上がりのロックオンは刹那に顔を向ける。
刹那はベッドに寝転がったまま、ちらりと横目だけを動かして彼が出てきたのを確認する。
シャンプーの香りが空気の流れと共に伝わってくる。
ロックオンは西洋人のくせに普段香水を好まない。
理由は、刹那を抱いた後の匂いを消したくないから、だそうだ。

「…遅い」

刹那はボソッと呟く。
本当はそんなこと思っていない。
ただ突発的に口をついて出た言葉だ。
ロックオンはクスッと笑う。

「お待たせ致しました、お姫様」

キザな台詞をはきながらロックオンは刹那の寝ているベッドに腰かける。
ギシッとベッドがしなった後、彼は刹那の手を取ってその甲にちゅ、とキスを落とす。

「せっかちだな刹那は。そんなに早く抱いて欲しい?」

ロックオンは優しく言う。
刹那は寝転がったまま特に何も反応しない。

ここから彼を仰ぎ見ると、彼のバスローブから厚い胸板とかちゃんと筋肉がついた腹筋とかが見え隠れするのだ。
それがランプに照らされて妖艶さを一層際立たせる。
刹那は男らしい彼のがっしりした体格が好きだった。
細くて身体の小さい自分には無いものだから。

ないものねだり。

きっとそうなのだろう。



「愛してる、刹那」


あぁ、まただ。
また今夜もロックオンに先手を打たれて抱かれることになるのだ。

ロックオンがいきなりそう言って刹那の身体の上に乗ってくるのを、刹那はぼんやりと見上げていた。

一体こいつは、今まで何人の女を抱いてきたのだろう。
男を抱いたのは刹那が初めてと言っていた。
両親を失ってからロックオンはたった一人で生きていかなければならなかった。
頼りになるのは仲間と、心の支えとしての恋人。

「お前以外考えられないよ」と彼に言われるが、ロックオンは過去に自分以外に愛した人がいるということ位知っている。
その愛撫の中に、何か忘れられない女性を求める感触が残っているのだ。

過去にロックオンが、いや、ニール・ディランディとして心から愛した女性。
CBに入る前に、別れてしまったのだろう。


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