ロク刹 シリーズ連載

□Trust in me. -prelude ◇
2ページ/23ページ


「…刹那…」

「……?」

「…好きだ」


これはもう大分過去の話。
…今思えば、あれは運命だったのかも知れない。

出会ってから今に至るまで、俺たちは何度いがみ合ったことだろう。
何度対立したことだろう。
はっきり言って、お前なんか眼中になかった。
街に出ればいくらでも女はいる。苦労の連続であるマイスターのリーダーを務める傍ら、気晴らしに女を抱く。唯一のストレス解消法だった。
…その頃はそうでもしなければやっていけなかった。

しかし、ある日の出来事が俺を変えた。突然お前が任務後に涙を見せたこと。
皆にはバレないように、格納庫でそっと泣いていた。
その横顔。
綺麗だと思ってしまった。
美しいと思ってしまった。
お前は感情なんか持たないんだろうと勝手に思っていたから。
いつしか俺は、生意気で素直じゃない彼に惹かれていったんだ。
そんな欠点さえ可愛いと思ってしまった自分がいて。

認めたくなかった。
必死に否定しようとした。

しかし彼を見ていて、無表情の中に隠された感情が、実は表に出せないだけだということに気づき、俺はその感情を知りたいが為にどんどん彼に近づいていった。少しでも話したくて何度も何度も。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ