ロク刹 シリーズ連載
□タイトル未定 ~prologue
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「……好きだ」
刹那は振り向きながら少し笑った。
笑ったら、とても心地よい春の風がふたりの間を通り抜けた。
「好きだ、ロック」
確かに刹那は言った。
自分たちは今まで何回、この言葉を伝え合ってきたのだろう。
俺はもう一度思い返す。
柔らかい髪が風に舞い、振り向いて視線が合う。
一瞬時が止まる。
空からは相変わらず穏やかな光が降り注いでいる。
今、ふたりの間に立ちはだかるものは何もなかった。
「……………ああ、俺も」
ロックオンも少し笑った。
笑いながら、なぜかひとりでに涙が頬を伝って流れていくのに彼は気づく。
―――――愛してる
お前に出会えてよかった…
離れても、何があっても、きっと消せない絆。
「ロックオン……」
刹那はまた小さく彼を呼ぶ。
彼は微笑んでいる。
ロックオンも穏やかな笑みを浮かべた。
風が流れ、見つめ合ったまま、また時が動き出す。
――――――同じ光がふたりに降り注ぐ空の下、彼は刹那に向かってゆっくりと歩き出した。
――――――――……