謙也連載
□止まない高鳴り
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「このあいだは、ありがとうございました。お礼…言いそびれてごめんなさい」
「お、おん!気にせんでええで!」
ばくばくばく。
話しかけられ、なんでか知らんけど心音が速まるんが自分でも分かった。
「あらん、篠原ちゃんと謙也くん知り合いやったん?」
「あ、金色くん。えと…」
固まる俺の後ろから小春が顔を出し、彼女と話し始める。ああ篠原さんて言うんや。ようやっと名前を知れた。
…て、なんで小春が彼女と知り合いなんや。そう疑問に思っていたらユウジがぼそりとクラスメートや、と教えてくれた。お前は俺の心が読めるんか。
「…て、いうわけなんです」
「そうなんや。謙也くん、かっこええわねえ」
「浮気か小春ぅ!死なすど!」
「先輩らキモいっすわ」
「ふふっ」
ぼーっと眺めている内に篠原さんがこないだの事を話し終えたらしい。
小春がニヤニヤしながら俺を見、ユウジが毎度恒例の突っ込みを入れ、財前がお馴染みの毒を吐いた。
それを見て小さく笑う篠原さんの笑顔にまた少し鼓動が速くなる。
「おーい!いつまでもしゃべくっとらんと、部活始めるでー!」
と、コートのほうからさっきまでインタビューを受けとったはずの白石が俺たちを呼んだ。ああそういえば部活中やった。って俺着替えとらんやん!
慌てて部室に入ろうと駆け出すと、篠原さんがあの、と遠慮がちに声を発した。
「部活、頑張ってくださいね」
「謙也さん、顔、にやけとりますよ」
「なっ」
コートへ向かう途中財前がぼそりと呟いた一言に、俺は反論出来ず顔を赤くすることしかできなかった。
止まない高鳴り
(今日は最高速で走れそうや!)