謙也連載

□止まない高鳴り
1ページ/1ページ





「このあいだは、ありがとうございました。お礼…言いそびれてごめんなさい」


「お、おん!気にせんでええで!」




ばくばくばく。
話しかけられ、なんでか知らんけど心音が速まるんが自分でも分かった。




「あらん、篠原ちゃんと謙也くん知り合いやったん?」

「あ、金色くん。えと…」




固まる俺の後ろから小春が顔を出し、彼女と話し始める。ああ篠原さんて言うんや。ようやっと名前を知れた。

…て、なんで小春が彼女と知り合いなんや。そう疑問に思っていたらユウジがぼそりとクラスメートや、と教えてくれた。お前は俺の心が読めるんか。




「…て、いうわけなんです」

「そうなんや。謙也くん、かっこええわねえ」

「浮気か小春ぅ!死なすど!」

「先輩らキモいっすわ」

「ふふっ」



ぼーっと眺めている内に篠原さんがこないだの事を話し終えたらしい。
小春がニヤニヤしながら俺を見、ユウジが毎度恒例の突っ込みを入れ、財前がお馴染みの毒を吐いた。

それを見て小さく笑う篠原さんの笑顔にまた少し鼓動が速くなる。





「おーい!いつまでもしゃべくっとらんと、部活始めるでー!」




と、コートのほうからさっきまでインタビューを受けとったはずの白石が俺たちを呼んだ。ああそういえば部活中やった。って俺着替えとらんやん!


慌てて部室に入ろうと駆け出すと、篠原さんがあの、と遠慮がちに声を発した。






「部活、頑張ってくださいね」









「謙也さん、顔、にやけとりますよ」

「なっ」



コートへ向かう途中財前がぼそりと呟いた一言に、俺は反論出来ず顔を赤くすることしかできなかった。







止まない鳴り

(今日は最高速で走れそうや!)







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ