謙也連載

□キミに会いたい
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会いたい人が、いる。


「ちょっとだけだからさ、ね?」
「や、やめてください」


「嫌がっとるやん、その子」





それは学校の帰り道、ナンパされて困っていた私を助けてくれた人。

ブリーチした綺麗な髪が印象的な男の子で、目が合っただけで今までにないぐらいドキドキしたんだ。

でも人見知りの激しい私はお礼も言わずにその場を全力で逃げ出してしまった。



今更だけど、助けて貰ったのにお礼の一つもないどころか逃げ出すなんて、いくら人見知りとはいえなんて失礼極まりない話だ。だから今度こそお礼を言いたい。

そして出来れば…出来ればだけれど、名前も知りたい。





そんな想いを胸に秘めながら、数日が経ったある日。





「あ」



新聞部の写真を整理していた私は、見つけてしまったのだ。キラキラ輝いて見えた、名前も知らないあの男の子の姿を。

髪の色は違うけど、たぶん間違いない。


じっと見つめていると横から一緒に写真整理をしていた白石くんが顔を覗かせた。



「お、懐かしいなあそれ」

「しっ白石くん。これ…テニス部の?」

「せやで。去年の春の大会の時のや。 うわ謙也の髪黒っ」



今こいつ調子乗ってブリーチしてんねん、と白石くんが指差したのはあの男の子。

そっか、彼はテニス部なんだ。しかも同じ学校で、白石くんの言い方からすれば同じ学年。名前は…けんや、くん。

それだけの事が分かっただけなのに、すごく嬉しい。




…あれ?

そういえば、テニス部って、確か…





「あの、白石くん」

「ん?」

「明日って…テニス部の取材、だよね?」

「あぁそういえばそうやったな。明日俺はインタビュー受ける側やから…取材よろしゅうな、篠原さん」

「あ、うん」




そうだ、取材のグループには私も入っている。

ということは…もしかしたら明日、彼に会えるかもしれない。そんな淡い期待が胸に生まれる。

彼に会えたら今度こそちゃんとお礼を言おう。名字は…同じクラスの金色くんに聞けば分かるかなあ。



そんな風に悶々と考えていると、横の白石くんがふと篠原さん、と私を呼んだ。




「なんや嬉しそうやな」

「えっ、そ、うかな」

「おん。顔に出とった」

「へっ」





笑って言う白石くんの言葉に、私は恥ずかしさのあまり耳まで赤くして俯いた。




…けんやくん、会えるといいな。







キミにいたい

(この気持ちはなんだろう)





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