謙也連載

□もやもや、もくもく
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「あの、忍足くん」

「篠原さん!…な、なんや?」



教室に入ろうとしたら、反対から歩いて来た篠原さんに声をかけられ心臓が跳ね上がった。

用があってただ呼ばれただけやっちゅーのに、変に嬉しさが込み上げてくる。ちゅーかわざわざ8組から俺の教室に来てくれたんや。そう考えるとやっぱり浮かれてまう。


にやけそうになるのを必死に抑えていると、彼女はあの、と手元の紙を見つめた。



「し、新聞部の連絡なんですが…し、白石くん、いますか?」

「え」



白石

その名前を聞いて表情が固まる。

そういえば白石も新聞部か。今更ながら思い出すと同時に、俺に直接の用があったわけやなかったことに落胆した。俺、単純すぎやろ…。


ぼんやり考えていると篠原さんが「もしかして、いないですか?」と再度問いかけてきた。篠原さんを待たせるわけにもいかず、教室を覗き白石を呼ぶ。

俺の呼びかけに本を読んどったらしい白石は顔を上げ、席を立つとすぐこっちに来た。




「…篠原さんが呼んどる。新聞部の連絡やって」

「ああ、そういえば連絡あるて言うてたな。おおきに」




すれ違い様白石に用件を伝えた俺はさっさと自分の席に着いた。


教室の入り口を見れば篠原さんが白石とさっきの紙を覗き込みながら話をしとる。


途中で二人で笑ったりして、なんやええ雰囲気とちゃうか。

ってなんで俺こないなこと考えとるんや…。誰と誰の仲が良かろうが俺には関係ないっちゅー話や。
せや、関係ない、関係、ない…





やがて二人を眺めていると予鈴が鳴り、授業が始まった。


席に戻った白石が何故かニヤニヤしながら俺を見とるのは気にしたらアカンと思う。キモいで白石。








や、

(そういえばなんで
俺の名前知っとんのやろ…)




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