謙也連載

□偶然か必然か
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『今日の放課後も同じ作戦で話しかけるんやで!』



謙也くんと少しだけ話せた次の日の放課後、携帯を見ると佳代ちゃんからそうメールが来ていた。

作戦というのは、同じ新聞部の白石くんを呼んでもらうという名目で謙也くんに話しかけるという、まさに昨日の休み時間に決行したアレのことだ。
ちなみに謙也くんの苗字は、佳代ちゃんがテニス部副部長の彼氏さんに聞いてくれたおかげで知ることが出来た。


本当に佳代ちゃんには感謝してもしきれない。でも今日もって…また来た、とか思われないだろうか。




「おい篠原」



返信しようとメール作成画面を開いたところで、不意に隣の席の一氏くんが話しかけて来た。



「え、あ、私?」

「篠原はお前しかおらんやろ」



一氏くんとはついこのあいだの席替えで隣になったばかりで、私の人見知りのせいもあってほとんど話した事がない。

…急にどうしたんだろう。
恐る恐る一氏くんのほうを見る。


すると彼は鋭い目で周りを確認したあと、「お前、こないだの取材の写真持っとるか」と尋ねて来た。


「写真?あるけど…どうしたの?」

「小春が写っとんのだけ焼き増ししてくれへん?」



小春…って金色くんのことかな。
そういえば二人は仲が良いんだっけ。…いや、仲が良いというよりその上みたいだけど、深くは突っ込まないでおこう。


私はいいよと承諾すると、写真用のファイルを取り出して一氏くんに渡した。



「どれが欲しいか言って貰えれば、あとで焼き増しして渡すよ」

「おん。おおきに」



一氏くんはファイルを受け取ると、普段とは違う生き生きとした目でページをめくり始めた。


…そういえば取材の時、変に緊張しすぎたせいで何を撮ったかあまり覚えていない。
それにこのファイルは今朝方白石くんに渡されたばかりで、まだ流し読み程度しか確認をしていないし…あれ、何が綴じられているか怖くなってきた。



「あの、一氏くん」

「……」

「…ひ、一氏、くん?」



不安になって一氏くんに声をかけると、最後のページまでめくったらしい一氏くんは、手を止めて私とファイルとを見比べてきた。


な、なんだろう。
視線が怖くてびくびく怯えながら彼の表情を伺う。



すると彼は手元のファイルをトン、と指差して…何故か、ニヤリと笑った。



「これ」

「は、はい」



「謙也、写りすぎとちゃう?」

「ッ!?」



「ほほう、もしかして謙也のこと…」

「わあああ!!ち、ちがっ、違います!」




一氏くんの言葉に顔が熱くなったのがわかった。



最悪だ。
仲が良い子ならまだしも、あまり話した事のない隣の席の人(しかも男子!)にバレてしまうなんて!





ガラッ


どうしていいか分からずあたふたしていると、音と共に教室のドアが開いた。私も一氏くんも、自然とそちらに視線が移る。





「…あー、っと…お邪魔、やったか?」





…噂をすればなんとやら。


見ればそこには謙也くんが立っていて、私の頬は更に真っ赤になってしまった。






然か必然か


(助けて佳代ちゃん…!)




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