TENNIS
□泣かないで、ハニー
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「…えへへ、フラレちゃった。」
そう言って自虐的に笑う彼女の瞳は、今にも涙が溢れそうで
…直視、できなかった。
「…相手も馬鹿だな。」
「そう、だね。」
「……後ろ、乗るか?」
「うん。乗っけて。」
慰めの言葉すら上手く言えずに、自転車の後ろを指差すだけの俺は情けなくて。
「背中…捕まっていい?」
「当たり前だろーが。ちゃんと腕回しとけよ。」
「…ん、ありがと。」
泣くなよ、泣くな。
アイツなんかの為に、お前が傷つく必要ねぇだろ。
「なぁ。」
「……なぁに、宍戸?」
「いや…何でもねぇ。」
捕まる腕の震えが伝わる。
言葉が上手く出ない。
俺は「気にすんな」とだけ声をかけた後、無言でペダルを漕ぎ続けた。
夕日の中
押し殺された彼女のかすれ声だけが、背中から聞こえた。
泣かないで、ハニー
(どうせ泣くなら、俺の胸で。)
(宍戸さんは夕焼けバックな青春がよく似合うと思います。)