第一章
□ある老夫婦の話
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カーテンから入ってくる日の光を受け、彼女は目覚めた。
名はラスティ、この喫茶店『Black SPHIA』の店員の一人である。
パジャマから普段着に着替え、ジョウロを片手にスライド式の窓を開ける。
そこには太陽の光を気持ちよさそうにサンサンと浴びる色とりどりのデイジーがあった。
「おはようございます、今日も綺麗に咲いてくれてありがとう」
そう花に語りかけると水をかけてあげる、彼女にとっての日課でもあった。
コンコン、と扉からノック音がした。
もう一人の従業員が、朝食が出来たことを知らせてきたのだ。
「起きてんだろラス子、さっさと飯食って店開けるぞ」
「おはようございますカラスくん、今日は…わぁ、ミートパイですか?美味しそう!」
「オレ様が作ったんだから当ったり前。昨日採れた南瓜あったろ、あれも入れてみた
ほら、さっさと顔洗ってこい」
「本当に料理上手ですよね、エプロンもよく似合ってるし。お母さんみたい」
「うっせ、誰がお母さんだ」
「痛っ」
鍋掴みをはめたままの手でチョップをされるラスティ。
「落とすなよ」とトレーに乗せられたできたてのミートパイを持って階段を下りた。
階段を下りたらすぐに喫茶店の主の部屋がある、のだが…
「あれ、ユダさんがいない…」
いつもは店を開けるまで、いや…店を開けても寝ている主を起こすのもラスティの日課となっている。
今日は珍しく起きたのかな、と思ったがあることを思い出した。
「…まさか」
店へと続く入り口へと向かい、暖炉前にあるソファを見てみる。
「Zzz…」
そこに喫茶店の主、ユダが安らかに寝ていた。
いたって普通に。
その顔には白い布、そして手は胸の上で合わせられていること以外は、本当に、いたって普通であった。
「ユダさーーーーーーん!!!」(怒
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