shortstory

□移し合いっこ
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「俺、死ぬかも…」
「風邪で死ぬやつがあるか。」
「ひどいっ!」



風邪をひきました。


宍戸さんが看病してくれるって言うから、すぐに治りそうなんだけど。
扱いが、普段より酷い気がするのは俺だけかな…?


「食え。薬買ってきたから。」


さっきっから怒ったように眉根を顰て、喋りかたもなんだかぶっきらぼう。
ちょっと寂しいと感じながらも、何も言わないでお粥を口に運んだ。

きっと、看病に必死なんだ。そう考えると、可愛く見えて仕方なかった。


「何にやけてんだよ、気色悪ぃ。」


心なしか赤い顔を見て、恥ずかしいのかと微笑む。
鼻の下は伸びっぱなしだったから、きっとかなり酷い顔だ。

それを見て、宍戸さんはさらに赤くなった。
なんだろう、いつもより可愛い。


「可愛いよ。」


帽子のない頭を撫でて、自分のほうに引っ張った。
そうした時に、やっと気付いた。

俺って本当馬鹿みたい。


「ちょたろ…」
「俺より熱あんじゃないですか!」
「へへへっ…」


宍戸に大丈夫か聞くと、最近ずっと微熱続いるから平気、と弱々しく答えてくれた。

だからか。
俺に、自分が風邪を移したと思ったから、看病してくれたのか。
気にかけてくれたのは嬉しかったけど、そういう理由で見舞いに来てくれたと思うと、ちょっと悲しかった。

先輩らくて、可愛いから良いけど。


「俺、熱下がってきたから看病しますね。」


治ったら、いっぱいいっぱい可愛がってあげますから、早く治してくださいね。







(キスでほんとに移るんですね!)
(ばか、消えとけ…)


――――
お決まり風邪ねた。


 

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