何処とも知れぬ世界、何時-イツ-とも知れぬ時代-トキ-

□牡丹雪
1ページ/4ページ



訳の分からない道を通り、行き着いた先は檜で出来た小さな扉だった。
有髪僧は少年を顧みる事もなく中へと入って行く。少年も若干躊躇はしたものの、このままでは見付かるかも知れないという不安から、恐る恐る入って扉を閉めた。

「……………」

「……………」

有髪僧は一言も発さない。
少年も黙り込んでいたが、痺れを切らして喋り出すまでは早かった。

「………なんで僕を助けた?」

「……………だから早く帰れって言ったんだ」

有髪僧が苛ついた様に言う。
話がまるで噛み合わない。
答えになってない言葉を聞き、少年の方も苛々として、二人は無言で数分睨みあう。

膠着状態を破ったのは有髪僧の溜め息だった。

「……アイツらに何もされなかったか…?」

そういった不機嫌な有髪僧の瞳は、到底自分の敵とは思えない程の温かさをもっているように少年には見えた。
警戒する必要は無い。その思いに安堵した瞬間、膝の力が急に抜けて、少年はへなへなと其の場に座りこんだ。

「…こ、怖かった…っ…」

ガクガクと震える膝もそのままに、少年は先程免れた恐怖を思い出し、泣きじゃくる。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ