何処とも知れぬ世界、何時-イツ-とも知れぬ時代-トキ-
□牡丹雪
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次の日の朝。
少年が目を覚ますと有髪僧の姿はなかった。
「何処行ったんだろ、アイツ…」
一人で勝手の分からないこの部屋にいるのも不安だが、昨晩あんな事があった為、外に探しに行くのも不安だ。
どうしたものかと悩んでいた時、この部屋唯一の出入口である小さな扉が開いた。昨日の出来事を思い返すと子供っぽくて恥ずかしくて、掛ける言葉も見つからず、挨拶すらもその可愛らしい唇から紡がれることはない。
「起きたか…」
普段は寡黙な人が喋ったのを幸いに、少年は押し黙って次の言葉を待った。有髪僧の手には桶があり、それを少年に向かって無愛想に突き出す。
「顔でも洗え」
突き出された桶にはたっぷりと清水が湛えられており、言っている有髪僧の身支度は既に整えられているようである為に、この僧がはなから自分の為に水を汲んで来てくれたことが分かった。
「…この水、飲めるか?」
少し嬉しくなった内心を隠して、少年は無愛想に礼ではなく質問をする。
「ああ」
嬉しさを隠しているのが判る無愛想な少年と違い、本当に無愛想な返答が帰ると少年は白く滑らかで小さな手を桶に差し入れ、水を口元へと運んだ。
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