オリジナル小説
□白亜-はくあ-
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「…あら?」
小さな窓の向こうには雪が降っていた。絨毯の如く敷き詰まった純白の中で、漆黒の影が動いていた。
「…何かしら…?」
影はまるで、少女の小さな呟きを聞き咎めたかの様にその面【おもて】をあげた。そして、視線が絡む。
――まあ、なんて綺麗な瞳をしておられるのかしら。
遠くてよく見えないけれど、何故だか…とても…――
そこまで考えると少女はハッと気が付いて、窓を開け黒髪の少年に向かって微笑んだ。
「今日は。貴方は、誰?」
少年は人懐【ひとなつ】こい笑顔を作るとそのまま何処かに行ってしまった。
「嫌われてしまったのかしら…お友達になりたかっただけなのに…」
少女は窓を閉めて、相変わらず白い部屋の中へと顔を向けた。白い床にペタリと座り込んで、まだ行ってみたことのない、外の世界に想いを馳せる。
(何も無い処なのかしら?
それとも、逆?私が見たことが無い様な物が沢山在るのかしら…?)
「…一体、どんな処なのかしら…?」