本棚5

□はにかんだ様に笑う。
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太陽が地平線の彼方から、未だに顔を出さない夜中。
女の手の届く範囲に置いてあるPETが鳴った。

「電話……リーダーからよ。良かったわね、クルス。」
「ん…その言い方、そろそろ代えたらイリーガル?」

皮肉を折り混ぜながら、手近のPETをたぐりよせ、電話に応答する。真面目な時ではない不機嫌な棒読みで。

「はい。こちら、度胸と愛嬌と忍耐が売りの、請負業務。金次第で、なんでもおまかせー。因みに営業時間は、12:00から夜…」
「なら大丈夫だな。アメロッパは昼の一時だからぷつ…。」

無機質なPETから、音が途切れた。女の指は確実に終話ボタンを押していし、女の笑顔が怖い。
沈黙が流れ数秒後、再びPETが鳴りだす。

「もしもし…」
「悪いな。」
「悪気があるなら、こんな時間に電話をかけないでください」
「……依頼だ。」
「ご要望は何なりと。」

女は、かすかに口角をあげた。
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