Book4
□風邪。
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終礼のベルと共に慌てて、バレルは部屋から駆け出した。
その慌ただしさは、まるで誰かの死に際の様な。
彼の部下とも、言える人達はヤレヤレとした表情で笑っていた。
【LIVE JOY】の我夢様に。
お誕生日記念、バレライ。
風邪。
バタバタと、埃を舞わしながらバレルは、茶色のドアの向こう側に飛込んだ。
「た…いさ?。」
赤らんだ顔で、しんどそうな目付きのライカがバレルを見上げる。熱が出ている所為か、潤んだ目で。
「大丈夫か。」
心配そうに、手をライカの額に置く。彼が熱すぎるのか、はたまたバレルが走りすぎて手が冷たいのか、感覚が鈍って解らない。
おそらく、きっと両方。
近くに有る水桶は、自分でコマメに取り替える様に置いたまま。自分で取り替えるのすら、億劫になったのだろう。バレルは手を伸ばして適度な固さに絞りあげて、額に乗せる。
「何か作ろうか?」
「……要りま、せん。」
大佐が手を握ってくれるなら。
途切れ途切れ言うライカの言う通りに、手を握る。子供みたいに高い目の体温は、いつもよりすこし、熱く。水作業したことも加えて、冷たいバレルの手からその冷たさをゆっくり奪って行く。
「となりに居るから、ゆっくり寝るといい。」
「は……い。」
潤んだ瞳は時間をかけて閉じられ、しばらくすると聞こえて来るのは、ゆっくりとした寝息。
握った手は解かれる気配もなく。バレルは小さく息を吐くと、ライカの隣に横になり、うとうとし眠りについた。
風邪。
隣にいれば怖くない。