Red×Gray

□第四話 別れと出会いと誓い(仮)
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第四話 別れと出会いと誓い
―伝説の『杖』―
 翌朝もなぜか空は暗く、どんよりとした雲に覆われている。広場には何人かの兵士が集まり、それ以外にいるのは、手をしばられたバウリとトゥーエサと、ハビルとベリテス、そして、『太陽の神殿』の前に静かにたたずむ父アタワルパだけ。ピサロという男は朝早く故郷のスペインという国へ帰り、王に報告しに行ったらしい。 バウリもトゥーエサも父から遠い場所にいて、父の背中しか見ることができない。兵士もベリテスたちも一言も言葉をかわさない。 バウリは落ち着かなくなり、横にいる姉を見た。その目は腫れている。おそらく眠れず、泣いていたのだろう。バウリも眠ることができなかったため、目は充血しているが、しっかり開いている。緊張がそうさせるのだろう。
 バウリは再び『神殿』の前の父を見た。父は目の前の階段をのぼらず、しかもそこから十歩ほど離れたところに立っている。
 いったい何が起きるというのだろう?『杖』とはいったいどんなものなのだろうか?話や挿絵などでしか知らない伝説の存在に、不謹慎ではあるが、バウリは少なからず興奮し、緊張していた。
 それは、ベリテスたちも同じらしい。ベリテスたちは父から数歩離れたところに少し離れて立っている。ハビルは落ち着かないらしく、さっきから剣の柄を指でたたき続けている。ベリテスは昨日と同じ格好で、黒い衣服に身を包んでいる。天気がこんなだというのに、まったくうっとうしいったらない。ベリテスもさっきから何度も体重をかける足を替えている。バウリは二人を見ると、虫唾が走るので、なるべく意識しないようにしていた。

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