24hours of Vampire

□STORY4―異常
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―P.M.18:56―
何が起きたんだ?遠のく意識の中でタイスは思った。不思議な感じだ。一瞬強い衝撃を受けたが今は何ともない。ふわふわと浮いたような・・・体から感覚と言う感覚が全て消えていた。
「グォォォオオオォォオォ!!!!」
雄たけびが教会を揺らす。タイスはその声で一気に目が覚め、体中の感覚が戻った。その瞬間、激しい痛みに襲われる。タイスは思わずうめき、体を丸めた。腕を体と壁にはさめたらしく、しびれて思うように動かない。動かそうとすると、体の右側全部が痛み出す。タイスは血の味のする口で悪態をついた。
そして、自分をこうまでした犯人をにらんだ。そして、タイスは生まれて初めて自分に視力があることを後悔した。
そこにいたのは人間じゃない。
獣でも、ホラー映画に出てくるおばけでもない。
そんなもの比べ物にならない。
鳥肌がたった。背筋を寒気が走る。
そこにいたモノはまさに“悪魔”と呼ぶのにふさわしかった。
天井から降り注ぐかすかな月の光が怪物の姿を浮き彫りにする。
影のように黒い体、筋肉は不格好に盛り上がり、血管は浮き出て、骨格は完全に生き物から逸脱している。半分つぶれかけた赤い目は妙な輝きを持ち、大きく裂けた口からは鋭い牙がのぞく。体はタイスの三倍の大きさはある。怪物は口から唾液をたらしながら、周りの様子をうかがっている。
タイスは胸を押さえた。心臓が張り裂けんばかりに鼓動を打っている。冷や汗が体中から噴出し、息すらまともにできない。
見たこともないモノ。“悪魔”だというなら、聖書の中に挿絵があってもいいだろう。しかし、そいつは誰もが恐れるような、本の挿絵にすらできないほど、一体誰がこんな恐ろしいものを思いつくというのだろう。思いついたならその人は人間じゃない。
体中の痛みなんてどうだっていい。タイスは思わずあとずさる。
やつはまだルーディンにも、おばさんにも、そして自分にも気付いていない。
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