24hours of Vampire

□STORY8―死の追走劇
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−P.M.15:29−
 2人は薄暗い道を歩いていた。高い建物のせいで光が入らないためだけではないだろう。五番街のスラムは少し雰囲気が違う。さきほどよりも危険な雰囲気が、タイスはなんとなく感じられた。怪しい露天もなければ、占い師もいない。不良やホームレスもいない。あるのは道端のゴミと壁の血痕と銃弾の跡ぐらいだ。よく見た落書きもここらではまったく見られない。そして、なんとなく嫌なにおいがする。魚が腐ったようなにおいもするし、何かがこげたにおいもする。タイスはそんな周りの雰囲気の変化を感じながら、眉をひそめた。

 音の無い道を2人は黙々と歩いた。十字路に行き当たり、先を歩いていたタイスは立ち止まる。タイスは頭をかきながら文句を言った。ルーディンもきょろきょろとして、それぞれの道を見た。「五番街・・・としか聞いてないからな・・・」どの道も薄暗い変わり映えのない景色が続いているようだ。
タイスはなんとなく急に落ち着かなくなってきた。あまりにも静か過ぎる。それが気味が悪くなってきたのだ。道の端に置かれた木箱やゴミ箱も一見それとはわからないほど壊されている。あたりには誰もいないのに、誰かに監視されているような気さえする。タイスはルーディンに言った。「とりあえず先に進まない?」ルーディンも仕方ないという顔をした。「そうだな。」
 そのとき、ルーディンの顔つきがさっと変わる。タイスは眉をひそめて、同じ方向を見た。古い建物に両脇を固められた薄暗い道がどこまでも続いていく。「どうしたの?」タイスは声を低めて言った。ルーディンが答えないので、もう一度話しかけようとしたが、静止された。
 ルーディンは誰もいない道に向かって威圧するように言った。「誰だ。出て来い。」返事はない。目の前の景色は何一つ動かない。だが、空気がおかしい。タイスは無意識に腰のベルトにはめているナイフに手をのばした。張りつめた空気と緊張で一粒の汗が流れた。
 「動くな。」突然背後から男の声がして、タイスは固まった。硬いものがタイスの後頭部におしつけられている。銃だ。タイスはとっさに悟った。ルーディンがタイスのほうを振り返る。男はもう一度言った。「動くな。」そして、強く銃口をタイスに押し付ける。タイスはゆっくりと両手をあげた。ルーディンは冷たい目で男をにらんだ。この時期に長いコート、コートの下には高そうなスーツを着ている。幅広いつばの帽子にサングラス、いかにも怪しい。
 


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