24hours of Vampire

□STORY9―明かされた秘密
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−P.M.16:24−

 タイスはルーディンに肩を貸しながら、老人について奥の部屋に入った。タイスとルーディンが入ると老人は扉についた3つの鍵をしめた。
 その部屋は研究室だった。決して広くは無い部屋に天井からぶら下がる裸電球。部屋の壁に沿って机や本棚、ガラス張りの棚が置かれ、本棚からあふれ出した本が机や床に散乱し、積み上げられている。ガラス張りの棚の中には理科室で見るような標本やホルマリン漬けもある。部屋の真ん中にガラス張りの空間があり、その中に大きな台がある。その上には青い蛍光灯やフラスコ、試験管、シャーレがいくつもある。
 「こっちじゃ。」タイスは老人に近づいた。そこには大きなソファーがある。少し汚いが、今は文句も言ってられないため、タイスはそこに寝るようにルーディンにうながした。ルーディンは疲れていたようでおとなしくソファーに横になった。老人が奥の棚で何か探している。タイスは治療をするのに自分は邪魔だろうと思ってそこから離れた。

 タイスは研究室を見回した。露天の店主に教えてもらった“変わり者のじいさん”に会えた。これでルーディンの“探し人”に会う手がかりが見つかる可能性が高い。タイスの心はなんとなく高揚していた。
 タイスは老人に言った。「じいさん、名前は?」老人は応急処置用の消毒や包帯の入った箱を持ってきた。老人は鼻を鳴らしただけだった。タイスは一瞬ムカッときたが、こういうところに住んでいるのだ、いろいろな事情があって話したくないのかもしれない、そう思い直して質問をかえた。「何て呼べばいい?」少し間があって老人は言った。「博士(ドクター)ならいいじゃろう。」タイスは満足げに笑った。「そっか。ありがとな、博士。助けてくれて。」老人はまた鼻を鳴らしただけだった。タイスはまたムッとしたが、放っておくことにした。恩人には変わりないのだ。
 タイスは改めて研究台を観察する。入ったら怒られそうなので、ガラス越しに眺める。試験管には何かの液体が入っていて、シャーレの中にも何かの液体が入っている。何の研究なのだろうか。タイスは頭を働かせた。父さんと母さんと同じ国家を裏切った科学者、そして両親はルーディンとつながりがある。イラクの研究所、そこで行われていた研究って何だろうか。タイスにふと教会での化け物がよぎった。タイスは頭をふると、研究台から離れた。



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