24hours of Vampire

□STORY1―日常
2ページ/6ページ

いつものことなのだ。タイスは幼いころに両親を亡くして以来、父方の祖父のもとで暮らしてきた。祖父は文字通り聖職者である。困っている人には迷うことなく手を差し伸べ、タイスがあきれるほどのお人よし。優しく決して怒ることなく、けれど厳しくタイスを育ててきた。タイスは祖父をよく慕っているし、自分でも認めざるを得ないおじいちゃんっ子だ。祖父は怒らずおだやかに言うが、有無を言わせぬ雰囲気があり、反抗のしようがないと思わせられる。「それに、昨日も宿題をせずに寝ただろう。神様へのお祈りもせずに・・・」いつものことなのだ。タイスは閉まりかかっていたドアを勢いよく開けて祖父に言った。「だーっ、もう、わかった!学校から帰ったら聞くから!!」「タイス。」祖父には効果なし。「何?」タイスは言った。周りから見るとどんなに声にイライラが表れているように思われても、それはいつだって決して心からではない。ただタイスが短気なだけで、タイスはたった一人の家族として祖父を心から愛している。
祖父がこちらを振り向いた。年齢を重ね得たしわだらけの顔。しかし、おだやかでとても優しい。祖父の目が細まる。深くなる目尻のしわ。
 「おまえに神のご加護がありますように・・・。」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ