24hours of Vampire

□STORY2―運命の中へ
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 タイスは言葉を失った。どうなってるんだ?ゴーン、と最後の鐘の音が鳴った。数えてはいないが、タイスは習慣上そう分かった。鳴り響く鐘の中、目が自然と白装束の集団にいった。ステンドグラスを通して夕日の光が彼らを照らす。それは美しくも恐ろしい感じを受ける光景だった。彼らは祭壇に上る。タイスは祭壇にも誰かいることに気がついた。腹ばいに倒れている。その人は少しだけ顔をあげた。白いローブのような衣装の隙間から見えた赤い目。真っ赤な瞳孔の開いた赤い目とタイスの目があう。タイスはその目にひきつけられる。その人の肌は浅黒かった。そして、その人は白い影に隠され見えなくなった。その瞬間最後の鐘の音の余韻も消えた。
 何がどうなっている?タイスの思考回路は停止し、タイスはただ呆然としていた。「・・・タイス?」タイスは自分の名前を呼ばれ、我にかえった。女性がうっすらと目を開け、こちらを見ている。「おばさん。」タイスはおばさんに顔を近づけた。「おばさん、ごめん、待ってて、今、助けを」「タイス。」おばさんの声にタイスは黙った。「逃げなさい。」「え?」「早く、逃げなさい。」「何言ってんだよ!おばさんが。」「逃げるのよ!」おばさんのいつになく真剣な声にタイスは口をつぐんだ。そして、今やっと、緊急事態なのだと脳に知らせが伝わった。「逃げなさい。」おばさんは血を吐いた。気がつかなかったが、おばさんは腹から大量の血を流している。それを見てタイスは正気に戻った。今はおばさんを助けなければ!タイスは首をふった。「助けを呼んでくる!じいちゃんを呼んでくるから!」タイスは息をすい、大きな声で祖父を呼ぼうとしたときだった。おばさんが立ち上がろうとしたタイスの手をつかむ。「タイス。落ち着いて聞いて。」

「あなたのおじいさんは死んだわ。」

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