24hours of Vampire

□STORY2―運命の中へ
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「・・・え?」タイスは自分の心臓の鼓動が速くなるのを感じた。おばさんの視線が動く。タイスもそれを追う。結果はわかっていた。視線がいきついた先は、祭壇の前のあの塊だった。
 タイスはふらりと塊へ歩み寄る。そして、ひざから崩れ落ちた。「嘘だ・・・ろ・・・?」
 祖父はあとかたもなく八つ裂きにされていた。そこにあるのは肉の塊だった。肉片に交じり、祖父の着ていた青い服が見える。白髪もだ。しかし、そこには、人間だったという跡は何もなかった。肉塊から流れ出す血が、床のカーペットにしみこんで、カーペットは湿っていた。タイスはただ首をふった。「嘘だ。」小さな声でつぶやいた。朝が来て、祖父の小言を聞き、学校へ行って、授業を受け、家に帰る。そして、祖父と夕飯を食べ、いろんなことを話すつもりだった。社会の時間のこと、バスケのこと。そして、眠りに落ちる。いつもどおり。そう、いつもどおり。平凡な毎日を過ごしていく。これまでも、これからも。そのはずだった。
 でもその平凡な日常は消え去った。
「嘘だ―――!!!」

タイスは肉塊にしがみつき、叫んだ。肉塊はまだあたたかかった。タイスの叫びが教会中に冷たく響く。そして、それは泣き声へと変わっていった。
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